久米島
六月五日、今年最初の 正使はサングルミー(与座大親)、副使は 長男のサグルーが山グスクに行って、三男のイハチが サムレー大将は 「しばらく浦添に落ち着いていたので、旅がしたくなりました」と言って修理亮は笑った。 「ヤマトゥ(日本)は明国との交易をやめてしまった。明国に行った事があれば、ヤマトゥに帰った時に、何かと役に立つだろう。俺は何を見ても驚いたが、ヤマトゥンチュの修理亮が見ても驚く事がいっぱいあるだろう。見聞を広めて来い」とサハチは修理亮を送り出した。 いつも強気の浦添ヌルのカナが心配そうな顔をして見送っていた。 進貢船が旅立った二日後、サハチはウニタキ、ファイチと一緒にちょっとした旅に出た。三人で旅をするのは五年前のヤマトゥ旅以来で、行き先は 七年前に明国に行く時、久米島には寄ったが、港の周辺を見ただけだった。旅の目的はタブチたちの様子を見に行くのとタブチの奥さんを送り届ける事だが、ついでに、島内を散策するつもりだった。 一緒に行くのは 「久米島にはアマン姫様の アマン姫の娘に ササは首里のビンダキ(弁ヶ岳)のウタキ(御嶽)で、ビンダキ姫の神様の声を聞いて、その事を知ったという。イシャナギ島に行く前に、久米島にはどうしても行かなければならないと言った。 久米島には死んだはずのタブチがいるので、若ヌルたちは連れて行けなかった。彼女たちを信じないわけではないが、ついうっかりとしゃべってしまう危険があった。ササは若ヌルたちをサスカサに預ける事にした。サスカサは安須森若ヌルも預かっていたので、五人の若ヌルの面倒を見なければならない。さらに、島添大里グスクの留守も、ナツと一緒に守らなければならなかった。 ヒューガの船に乗り込んだサハチ、ウニタキ、ファイチは久し振りの旅にウキウキしていた。 「琉球に来る時、密貿易船に乗って来たのですが、久米島にも密貿易船が何隻か泊まっていました」とファイチが言った。 「久米島に密貿易船?」とサハチは不可解に思って、「久米島で何を仕入れるんだ?」と聞いた。 「シビグァー(タカラガイ)ですよ。明国の僻地に 「 「雲南は 「シビグァーは今でも有力な商品というわけだな」 話を聞いていたササが、 「シビグァーはシャム(タイ)の国でも銭の代わりとして使われているのよ」と言った。 「なに、シャムの国でもか」とサハチは驚いた。 「 「シャムの国か。いつかは行かなくてはならんな」とサハチが言うと、 「 「あたしたちも行くわ」とササが言って、ナナとシンシンを見た。 二人は嬉しそうにうなづいた。 断っても無駄だと思ったサハチは笑うだけで何も言わなかった。 ササたちが、ヒューガと話をしている安須森ヌルの所に行くと、 「 「亡くなったか‥‥‥」 「病弱な人だったが、面倒見のいい人だったようだ。鬼界島で戦死した兵たちの家族たちにも一人一人きちんと挨拶に回っていたという。奥さんが亡くなった日、今帰仁の城下はシーンとなって、皆が悲しんでいたそうだ」 「そうか。会った事はないが、遠くから サハチは北を向くと両手を合わせた。 天気はよかったが風に恵まれず、その日はキラマ(慶良間)の島に泊まった。サハチがまた来たので、マニウシたちは驚いた。サハチはマニウシに、長男の 「なに、シラタルが跡を継ぐと言ったのか」とマニウシは驚いた。 「外間親方も 「そうか。シラタルが来てくれるか」 マニウシは妻と一緒に喜んだ。 サハチは何も気づかなかったが、ウニタキとアミーの様子が変だとファイチが言った。ファイチに言われて二人を見ると、確かに何となく変だった。 「アミーと何かあったのか」とサハチが聞くと、 「何もない」とウニタキは言ったが、サハチは気になってアミーにも聞いてみた。 アミーはしばらく黙っていたが、「何もないわ」と笑った。 ウニタキがアミーを口説いて、ふられたのかもしれないとサハチは思った。 次の日の 島の西側、 「大げさな出迎えはいらない。ただ、隠居してこの島に来た者たちに会いに来ただけだ」とサハチは言った。 翁長之子は恐縮して、サハチたちが上陸すると、兼グスク 「進貢船の正使を務めていた 「八重瀬殿の家族たちは 「この辺りを兼グスクと呼んでいるのは、兼グスクというグスクがあるのか」とサハチは翁長之子に聞いた。 「昔、あったようです。浦添から来た役人がグスクを築いて、大港を管理していたようです。その役人の子孫が兼グスク之比屋です」 「そのグスクを築いたのは、いつ頃の事なんだ?」 「今の兼グスク之比屋は七代目だと言っていますので、百年、いや、もっと前の事だと思います」 ここにグスクを築かせたのは 兼グスク之比屋は長老らしい立派な屋敷に住んでいた。長老と呼ばれる程の年齢ではなく、五十歳前後の男だった。サハチが サハチが思っていた通り、兼グスクを築いたのは英祖の家臣だった。その頃、久米島には サハチが久米島の歴史をもっと知りたいと言ったら、 サハチたちは兼グスク之比屋の案内で、ナーグスク大主たちが住む屋敷に行った。思っていたよりも立派な屋敷で暮らしていたので、サハチは安心した。 ナーグスク大主は留守だったが、奥さんが出て来て、タブチの奥さんと再会を喜んだ。ナーグスク大主はお世話になっている 「按司の息子に生まれたため、按司になってしまったけど、若い頃から田畑で働きたかったと言っていました。按司だった頃はいつも難しい顔をしていましたが、この島に来てからは毎日、楽しそうに笑っています。毎晩のように村の人たちがやって来て、一緒にお酒を飲んで騒いでいますよ」 そう言って奥さんは楽しそうに笑った。 安須森ヌルから ナーグスク大主の奥さんも長男の 日が暮れないうちに、タブチに会いたかったので、また改めて来ると言って、サハチたちはナーグスク大主の屋敷をあとにして、兼グスク之比屋の案内で、北目之大主に会いに向かった。タブチのいる堂の 北目の村には 「手前にあるのが 「ニシタキにクミ姫様の神様がいらっしゃるのですね?」とササが聞いたら、兼グスク之比屋は首を傾げてから、 「クミ姫様かどうかは存じませんが、この島の神様はニシタキにいらっしゃいます。堂の村はニシタキの向こう側にあります」と言った。 古いウタキらしいこんもりとした森の裾野に北目之大主の屋敷はあった。その屋敷の隣りに 「あまりにも昔の事なので、本当かどうかはわかりませんが、南の国からこの島に 「それで、 「そうではないようです。お米の事を昔はユニ(ヨネ)と言っていました。お米がユニと呼ばれていた頃も、この島はクミ島と呼ばれていたようです。クミにはお米とは別の意味があるようですが、今となってはわかりません。稲作を始めたのと同時に、貝の交易もして、この島は栄えて行きます。島で採れるシビグァーやヤクゲー(ヤコウガイ)を求めて 「それほど栄えていたのに、王様とかは現れなかったのですか」とファイチが聞いた。 「王様も按司も現れません。昔からこの島はニシタキのクイシヌ様が治めております。クイシヌ様のお告げに従って、この島を守って参りました」 「この島の 「そんな 「神罰とはどんな事が起こったのですか」とウニタキが興味深そうな顔をして聞いた。 「台風にやられて逃げて行った者もいたようです。雷に打たれて亡くなった者もいたようです。この島の 「クイシヌ様というのはヌルですか」とサハチは聞いた。 「そうです。ニシタキにおられる久米島の神様にお仕えしています。昔はこの 「クイシヌ様はいつからこの島にいるのですか」 「遙か昔からおられます」 「という事は代々、クイシヌ様を継いでいるという事ですね。娘さんが跡を継ぐのですか」 「実の娘とは限りません。選ばれた娘が跡を継ぐ事になります。クイシヌ様を継ぐには高いシジ(霊力)が必要です。神様の声が聞こえない者には務まりません。選ばれた娘は神様に導かれてニシタキに登ります。そして、厳しい修行の末に、クイシヌ様の跡を継ぐ事になります」 「今まで途絶えた事はないのですか」とファイチが聞いた。 「途絶えそうになった事はあったようです。でも、クイシヌ様がお亡くなりになったあと、クイシヌ様にお仕えしていたヌルが 「クイシヌ様には夫はいるのですか」とウニタキが聞いた。 「神様に選ばれた男が夫になる事もあります。今のクイシヌ様は先代のクイシヌ様の娘です。今のクイシヌ様は四十歳を過ぎましたが、夫になる男は現れませんでした。跡を継ぐ若ヌルもいませんので、皆が心配していましたが、去年、琉球から来られた 「なに、ミカがクイシヌ様の跡継ぎなのか」とサハチは驚いた。 ウニタキとファイチも驚いていた。 「まだ正式には決まっておりませんが、クイシヌ様はミカ様を大層可愛がっておられます」 ヌルとしてのミカをサハチは知らないが、ヂャンサンフォンのもとで修行をしているので、シジも高いのかもしれなかった。 「クイシヌ様に会う事はできるのですか」とウニタキが聞いた。 「お山に入っていなければ会う事はできます。この島を治めているヌルですが、豪華な宮殿に暮らしているわけではありません。普通のヌルと同じような暮らしをしていますので、誰でも会う事はできます。琉球から来られたお方なら歓迎してくれるでしょう」 サハチたちは北目之大主にお礼を言って別れ、隣りの新垣ヌルの屋敷に行った。 安須森ヌルもササたちもいなかった。お婆が出て来て、ヌル様はお客様を連れて、 しばらくして帰って来たササは、サハチを見ると、「凄い事がわかったのよ」と興奮した口調で言った。 「よほど重要な事らしいな」とウニタキが笑った。 「そうよ。すごく重要な事よ」 そう言ってササは深呼吸をしてから話を続けた。 「この裏にある古いウタキは、琉球から来られたクミ姫様がしばらく暮らしていた場所なのよ。でも、クミ姫様は一人じゃなかったの。お姉さんのウムトゥ姫様も一緒にいたのよ。やがて、クミ姫様はニシタキに登って、ウムトゥ姫様は南にあるアーラタキに登ったの。でも、アーラタキはニシタキよりも低いので、お姉さんとしては我慢できなかったみたい。それで、ウムトゥ姫様はイシャナギ島に行ったのよ」 ササは興奮したままそう言うが、サハチたちには何が重要なのか、さっぱりわからなかった。 「 サハチはウニタキとファイチを見てから首を傾げた。 「ウムトゥ姫様はここからイシャナギ島に行ったのよ。その跡をたどって行けばイシャナギ島に行けるのよ」 「そうかもしれんが、どうやって、たどって行くんだ?」とサハチは聞いた。 「それはまだわからないけど、ここからイシャナギ島に行ける事は確かだわ。一歩、前進したのよ」 「そのイシャナギ島というのはミャーク(宮古島)の近くにあるのか」 「近くのはずよ。島がいくつもあって、島伝いに行けるはずだわ」 「そろそろ行きましょう」とファイチが言った。 「そうだな」とサハチがうなづいた時、ファイチをじっと見つめている新垣ヌルに気づいた。 サハチはウニタキに新垣ヌルを見ろと目で合図をした。ウニタキは新垣ヌルを見て、そして、ファイチを見て笑った。 安須森ヌルが新垣ヌルにお礼を言って別れようとしたら、新垣ヌルも一緒に行くと言った。 「久し振りにクイシヌ様にご挨拶に行くわ」と言ったので、兼グスク之比屋は新垣ヌルに案内を頼んだ。 サハチたちは兼グスク之比屋にお礼を言って別れた。 富祖古岳、大岳を右に見ながら北上して、大岳からニシタキに連なる山々を右に見ながら東へと向かった。 ファイチは新垣ヌルと仲よく話をしながら歩いていた。 「ファイチは新垣ヌルのマレビト神だぞ」とウニタキがサハチに言った。 「間違いないな」とサハチは二人を見ながら笑った。 「年の頃は三十ちょっとといった所か。なかなかの 「しかし、ヌルに惚れられたらあとが怖いぞ。ファイチはこの島から帰れないかもしれないな」 「そいつはうまくないだろう」 「別れられなければ、一緒に琉球に連れて行くさ」 「それもまずいな。来月にメイファンがやって来る。騒ぎになるぞ」 景色を見ながらのんびりと歩いたが、 新垣ヌルの案内で、堂之比屋の屋敷に向かい、堂之比屋の案内で、タブチたちが暮らしている屋敷に向かった。 屋敷の庭に入って驚いた。大勢の子供たちがいて、タブチから読み書きを教わっていた。タブチは相変わらずの坊主頭で、サハチたちに気づくと目を丸くして驚き、嬉しそうな顔をして屋敷から庭に降りて来た。 「 「奥さんをお連れしました」 「そうか。すまんのう」と言って、タブチは妻を見た。 「元気そうなので安心しました」と奥さんはタブチを見て嬉しそうに笑った。 「タブチ殿が読み書きのお師匠をしているとは驚きましたよ」とウニタキが言った。 「堂之比屋殿に頼まれてのう。わしの知っている事を子供たちに教えようと決めたんじゃ。いつの日か、この島から進貢船の使者になる者が出るかもしれん」 「期待していますよ。素晴らしい人材を育てて下さい」とサハチは言った。 今日はこれでおしまいじゃと言ってタブチは子供たちを帰した。 安須森ヌルとササたちは新垣ヌルと一緒に、ニシタキヌルのクイシヌ様に会いに行った。 サハチたちは屋敷に上がって、タブチに 「馬鹿な奴じゃ」とタブチは目を潤ませた。 「タブチ殿もチヌムイも、エータルーと一緒に戦死した事になっています。もし、エータルーが戦死しなかったら、 「兼グスクにいる役人たちは、わしの事を知っているからのう。口止めしなくてはならんのう」 「タブチ殿が生きている事を知っているのは数人だけです。中山王の家臣たちも戦死したと思っています。役人たちには俺からも口止めしておきましょう」 「迷惑を掛けてすまんのう」 「チヌムイはどうしています?」とウニタキが聞いた。 「 「安須森ヌルになった佐敷ヌルたちがクイシヌ様に会いに行っています」とサハチは言った。 「クイシヌ様というのは凄いヌルらしい。島の者たちは神様のように尊敬しているようじゃ。妹の八重瀬ヌルもクイシヌ様に仕えているんじゃよ。それで、八重瀬グスクは今、どうなっているんじゃ?」 「マタルーが八重瀬按司になりました」 「なに、マタルーが八重瀬按司か」 「エーグルーは 「そうか。マタルーなら大丈夫じゃろう。ところで、山南王になった 「察度の御神刀?」 何の事だかサハチにはわからず、ウニタキを見たがウニタキも知らないようだった。 「わしの親父が察度からもらったという刀で、山南王の執務室に飾ってあるんじゃよ。親父はその刀のお陰で、山南王になったと妹の八重瀬ヌルから聞いて、わしはその刀を腰に差して、山南王になる決意を固めたんじゃ。しかし、わしは負け戦をして、大勢の兵を死なせてしまった。あとになってわかったんじゃが、その刀は察度の孫である他魯毎を山南王にするために、わしを利用していたんじゃよ。親父が山南王になったのも、察度の倅の武寧を守るためだったんじゃ。摩文仁が山南王になろうと決心したのも、その刀のせいのような気がするんじゃよ」 「他魯毎を山南王にするために、タブチ殿を利用したというのはどういう意味ですか」とファイチが聞いた。 「他魯毎はずっと 「いつも冷静だった摩文仁が、周りが見えなくなって山南王に執着したのも、察度の御神刀のせいかもしれませんね」とサハチは言った。 「ちょっと待て、摩文仁だって察度の息子だろう。どうして、息子よりも孫を選んだんだ?」とウニタキが聞いた。 「摩文仁よりも山南王妃の方が察度にとっては可愛かったんじゃないですか」とファイチが言った。 「そうかもしれんな」とサハチも思った。 「山南王妃の母親は武寧と同じ 堂之比屋が酒と料理を持ってやって来た。酒はヤマトゥの酒だった。久米島は中山王と交易をしている。米やシビグァーなどを持って行って、ヤマトゥの品々や明国の品々と交換していた。ヤマトゥの酒もそうやって手に入れたのだろう。サハチたちは遠慮なく御馳走になった。 「ウシャ(喜屋武按司)はどうしているのですか」とサハチはタブチに聞いた。 「ウシャはカマンタ(エイ)捕りをやっているんじゃよ」 「えっ!」とサハチは驚いた。 「この島に来た当初は退屈だと嘆いていたんじゃが、海に出て、カマンタ捕りをしているウミンチュと出会ってな。今は夢中になって海に潜っているんじゃ。ナーグスクの倅も一緒にやっておるんじゃよ。そのウミンチュは若い頃、馬天浜でカマンタ捕りをやっていたらしい。今でも、捕ったカマンタは馬天浜に持って行くそうじゃ」 「久し振りに俺たちも潜るか」とウニタキが楽しそうに言った。 「おや、これは 「この島では古くから豚を飼っているんじゃよ」とタブチが言った。 「えっ!」とサハチは驚いて、料理に手を出した。確かに豚の肉だった。 「どうして、豚を飼っているのですか」とサハチは堂之比屋に聞いた。 タブチの奥さんと話をしていた堂之比屋は振り向いてサハチたちを見た。 「久米島は古くから唐人と取り引きをしておりましたので、唐人が持って来た豚を飼育するようになったのです。いつも、豚の肉を食べているわけではありませんが、お祝い事の時はいただいております。今回は突然の事でしたので、 「久米島で豚の飼育をしていたとは驚きました」とファイチは言って、うまそうに豚の肉を食べた。 安須森ヌルたちが帰って来て、急に賑やかになった。ミカとチヌムイとミカの母親も一緒に来た。三人は近くの家で暮らしているという。少し遅れて、八重瀬ヌルも顔を出した。 日に焼けて真っ黒な顔をしたウシャも帰って来て、サハチたちを見て驚いた。 タブチがウシャとチヌムイ、ミカと母親、八重瀬ヌルにエータルーの戦死を知らせて、皆は驚き、悲しんだ。 「明日、ニシタキ(北岳)に登る事になったわ」と安須森ヌルがサハチに言った。 「そうか。俺たちは島を散策するよ。ミカも元気そうだな」 「弓矢を持って山の中を走り回っているみたい。ヌルというよりも 「そうか。クイシヌ様というのはどんな人なんだ?」 「あたしと同じ位の 「今までは食事の面倒も村の女たちがやっていたのか」 「そうらしいわ。村の女たちが野良仕事が忙しくて、食事を持って来ないと何も食べないでいるみたい。二、三日は何も食べなくても平気な顔をしているんですって」 「面白そうなヌルだな」 サハチがそう言うと安須森ヌルはサハチを見つめた。 「お兄さん、気をつけた方がいいわ。クイシヌ様に 「馬鹿な事を言うな」 「だって、お兄さんが惚れそうな人よ」 「なに、お前もヌルに惚れるのか」とウニタキが笑った。 「ファイチの奴、新垣ヌルに魂を奪われたようだぞ」 ファイチはでれっとした顔で、新垣ヌルと楽しそうに話をしながら酒を飲んでいた。 「あんなファイチさんを見るのは初めてだわ」と安須森ヌルが呆れた顔をした。 |
久米島の兼グスク
久米島の北目(西銘)
久米島の堂