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志慶真曲輪
『外曲輪』を攻め落とした日の朝、サグルー(山グスク大親)、ジルムイ(島添大里之子)、マウシ(山田之子)、シラー(久良波之子)とキラマ(慶良間)の島で師範だったタク(小渡之子)が率いる兵たちは、搦め手の『志慶真御門』に向かった。 総大将はサグルーだった。サグルーは島添大里の若按司だが、三年前の十一月に『与那原大親』に任命され、翌年の四月に『山グスク大親』に任命された。ジルムイ、マウシ、シラーの三人はサムレー大将としてサグルーに従った。 『山グスク』には険しい崖があり、大岩もあって、今帰仁グスクを攻めるための『岩登りの訓練』をするのに最適な場所だった。キラマの島から来た若者たちで編成された山グスクの兵たちは、二年余りも『岩登りの訓練』を続けて、様々な工夫もしていた。 サグルーは山グスク大親として、山グスクの百人の兵を引き連れて今帰仁攻めに参加するつもりだったが、ジルムイ、マウシ、シラーも大将としてキラマの若者たちを率いる事になった。搦め手攻めの総大将になったサグルーは全隊を見なければならないので、山グスクの兵たちは『マウシ』に任せる事にした。誰よりも岩登りが得意な『マウシ』が、山グスクの兵を率いる最適任者だった。 今帰仁の城下から『志慶真村』に向かう道を通るとグスクから狙い撃ちにされるので、サグルーたちは森の中に入って志慶真村を目指した。山刀で草木を刈りながら苦労して志慶真村に着くと、奥間のサタルーが『赤丸党』の者たちを率いて待っていた。 「兄貴、派手な『敵討ち』をしましたね」とサグルーがサタルーに言った。 「前もって、戦の邪魔になりそうな家々を焼いてしまおうと思って火を付けたら、強風が出て来て、みんな燃えちまったんだよ」とサタルーは笑った。 「サタルー兄貴、ひでえよ」とマウシが言った。 「今帰仁の遊女屋を楽しみにしていたんですよ」 「お前、馬鹿か」とジルムイがマウシを小突いた。 「戦が始まれば、遊女屋だって逃げて行く」 「遊女たちが『炊き出し』を手伝ってくれると思ったんだけどな」 マウシのがっかりした顔を見て、皆が笑った。 志慶真村の人たちは避難していて、村には誰もいなかった。 兵たちに『陣地作り』を命じて、大将たちは志慶真大主の屋敷で、作戦の再確認を行なった。 志慶真曲輪の絵図を見ながら、 「守備兵は『諸喜田大主』の兵と『謝名大主』の兵の百人だけですね?」とサグルーがサタルーに聞いた。 「そうだ。変更はない」 「百人だけなら落とすのはわけない」とマウシがニヤッと笑った。 志慶真曲輪内には四つの屋敷があって、先代山北王(a)の側室だったアリとユヌ、謝名大主の父親の謝名の御隠居、平敷大主の妹のフミが暮らしていた。 アリは攀安知(山北王)の妹のマナチーと弟のシチルーの母で、『奥間』から贈られた側室だった。マナチーとシチルーも子供の頃は志慶真曲輪で暮らしていたが、二人とも独立して城下で暮らしていた。城下が焼けたあと、マナチーと子供、シチルーの妻と子供は、外曲輪内の今帰仁ヌルの屋敷で暮らし、マナチーの夫の愛宕之子とシチルーは戦の準備に追われていた。ユヌは高麗人で、マナチーの一つ年上の娘を産んだが、その娘は十歳で亡くなり、本人も去年に亡くなったので空き家になっていた。 攀安知が山北王になった時、先代の重臣だった謝名大主と平敷大主の父親は無理やり隠居させられたが、グスク内に住む事を許されて、志慶真曲輪内の屋敷を与えられた。七十を過ぎた謝名の御隠居は若い後妻と気ままに暮らしていた。平敷大主の両親はすでに亡くなって、許嫁が前回の今帰仁合戦で戦死したあと、嫁がなかった妹のフミが一人で暮らし、志慶真村の娘たちに読み書きを教えていた。 志慶真村の避難民たちが入って来るとアリは『御内原』に移り、謝名の御隠居は後妻の実家に避難し、フミは志慶真村の娘たちと一緒に避難して、避難民たちに屋敷を譲った。 志慶真曲輪には『まるずや』の者たちが出入りしていたので、中の様子は詳しくわかっていた。 「志慶真村から避難した人たちは何人いますか」とジルムイがサタルーに聞いた。 「三十数人だろう」 「志慶真大主もいるのですか」とサグルーが聞いた。 「志慶真の兵たちが外曲輪の守備に回されたので、志慶真大主としても逃げるわけにはいかんのだろう。妹は諸喜田大主の妻だしな」 「諸喜田大主の妻は兼グスク按司(ンマムイ)の妻と仲がよかったそうです。できれば助けてやりたいと親父から言われました」 そう言ってから、サグルーはサタルーに作戦を伝えた。 正面から志慶真御門を攻撃するのはサグルーとジルムイ、左側の石垣を攻めるのはシラーとタク、志慶真川の崖を登って攻めるのはマウシとサタルーだった。敵は百人しかいないので、一人づつ片付けていけば、今日のうちに攻め取れるだろうと祝杯を挙げて、それぞれの持ち場に散って行った。 サグルーとジルムイは大通りを通って、志慶真御門の正面まで行った。兵たちが『楯』を並べていた。 志慶真御門は石垣が少しくぼんでいる位置にあって、御門の上にある櫓の中に弓矢を構えた兵が五人いた。大将らしい鎧武者の姿もあった。 「あいつが『諸喜田大主』ですかね?」とジルムイがサグルーに言った。 「そうかもしれんな。『奥間』を攻めた奴だから、サタルー兄貴が敵を討つだろう」 御門の下に石段があったが、『丸太車』の丸太の長さを調節すれば使えるだろう。御門の左右の石垣の上には、上半身を出して弓矢を構えている兵がずらりと並んでいた。 『志慶真曲輪』の奥の方に急斜面があって、その上に『一の曲輪』の高い石垣がある。石垣の上に山北王がいる『御殿』の屋根が見えた。志慶真曲輪から『二の曲輪』に行く坂道も左側に見えた。坂道の先には『櫓門』があった。 村のはずれから志慶真御門までの間は上り坂で、広場になっているが、弓矢の射程距離内なので進めなかった。 陣を敷くのに邪魔な家が五軒あったので、サグルーはジルムイに破壊しろと命じて、大通りで『物見櫓』を作っている兵たちを手伝った。 左側の石垣を攻めるシラーとタクは、森の中から石垣を見上げていた。城下と志慶真村をつなぐ道の向こう側に、三丈余り(約十メートル)の高さがある急斜面があり、その上に、三丈近くの石垣がある。石垣の上に敵兵の頭がいくつか見えた。急斜面には樹木はなく、取り付いた時点で上から狙い撃ちにされる。石垣の下まで行くのも大変な事だった。シラーとタクは森の中にねぐらとなる『陣地』を作った。 志慶真川から攻めるマウシとサタルーは、村はずれにある坂道を下って『船着き場』に下りた。小屋があったので、その周りに『陣地』を作るように兵たちに命じると、小舟に乗って志慶真川の偵察に出た。 川の周辺は密林に覆われていて、グスクを見上げる事はできなかった。流れが急な所と緩やかな所があって、しばらく下って行くと『船着き場』があった。二艘の小舟が岸に乗り上げてあり、細い道が上の方に続いていた。 「どこに行くんですか」とマウシがサタルーに聞いた。 「外曲輪だ」とサタルーは答えた。 「外曲輪ですか。本隊が『外曲輪攻め』にてこずったら、ここから攻め上りましょう」 「上から狙い撃ちにされるぞ」 「そうか。ここは『おとり作戦』に使いますか」 「そうだな」とサタルーがうなづいた時、ウニタキ(三星大親)が現れた。 サタルーもマウシも驚いた顔でウニタキを見た。 「ウニタキさん、こんな所で何をしているのですか」とサタルーが聞いた。 「俺の出番はまだ先だから、こっち側から『外曲輪』を攻められないかと調べていたんだ」とウニタキは笑った。 「攻められそうですか」とマウシが聞いた。 「難しいな」とウニタキは首を振った。 「密林を抜けると何もない急斜面に出る。上から丸見えで、石垣には近づけない。志慶真曲輪の方もそうなっている。お前たちの腕の見せ所だな。期待しているぞ」 「任せておいて下さい」とマウシは自信たっぷりに言った。 ウニタキは笑いながら手を振ると密林の中に入って行った。 サタルーとマウシは引き返す事にしたが、川を遡って行くのは一苦労だった。漕ぎ手を二人連れて来たので、四人で必死に漕いで戻る事ができた。 志慶真川がグスクから見えないというのは好都合だった。サタルーとマウシは『外曲輪の船着き場』まで、川に沿って道を作る事から始めた。 午前中には各部署の『陣地作り』も終わった。サグルーとジルムイは大通りから右に入った所に立てられた『物見櫓』に登って、志慶真曲輪内を見た。 正面の石垣はかなり幅があって、手前で弓を構えている兵の後ろにも弓を持った兵が何人もいた。所々に『石』が山積みされていて、上から落とすつもりなのだろう。『丸太』らしき物も見えた。 御門の上にある櫓の中は屋根に隠れて中まで見えなかった。左側の石垣は『二の曲輪』の石垣とつながっているが、途中に段差があるので、そのまま進む事はできなかった。段差の所で、『一の曲輪』から狙い撃ちにされるだろう。右側の石垣は『一の曲輪』の下にある急斜面の所で行き止まりになっていた。 曲輪内にある四つの屋敷は石垣に隠れて屋根しか見えなかった。曲輪内は平らではなく傾斜しているようだ。 「『志慶真曲輪』を奪い取ったとしても、その先が大変だな」とジルムイがサグルーに言った。 「あの急斜面を登って、石垣を乗り越えるのは『山グスク』で修行を積んだ者たちにはわけない事だが、上から攻撃されたら、それも難しい」 突然、『鉄炮(大砲)』の音が響き渡った。鉄炮の玉が『一の曲輪』に落ちるのが見えた。 「本隊の『総攻撃』が始まったようだ。俺たちも負けられんぞ」と言って、サグルーとジルムイは物見櫓から下りた。 『鉄炮』の音が鳴り響く中、早めの昼食を取ったサグルーたちは、『外曲輪』を攻めていた本隊が攻撃を中断した頃、最初の攻撃を開始した。 『外曲輪』を攻めている本隊から、『丸太車』に大石を落とされて潰されたと知らせが入ったので、『丸太車』の屋根が潰れないように、丸太の柱を何本も入れて屋根を強化した。 法螺貝が鳴り響いて、志慶真御門を目掛けて『丸太車』が突撃した。同時に『楯』を構えた先陣の兵たちが『梯子』を持って進み出た。弓矢の撃ち合いが始まった。 『丸太車』の上に大石が落ちてきて、屋根の半分が潰れて動かなくなった。『丸太車』を助けようと『楯』に身を隠した兵が進もうとしたが、敵の攻撃が激しくて『丸太車』まで行けなかった。『梯子』を持って進んだ兵たちは、石垣の上から『丸太』を落とされ、坂道を転がり落ちる『丸太』に弾き飛ばされた。 左側の石垣を攻めていたシラーとタクは、森の中にある高い木に弓矢を持った兵を登らせた。『楯』を持った兵が森から出て道に行くと、上から『大石』がいくつも転がり落ちてきた。『大石』は道を塞ぎ、『大石』に潰された兵もいた。 石垣の上の敵兵は無防備で『大石』を落としていたので、木の上から弓矢で狙われて数人が倒れた。敵も反撃してきたが、森の中の兵は見えず、ほとんどが木に刺さるだけだった。 『大石』を乗り越えて急斜面に取り付いた兵たちは、上から落ちてきた『丸太』に弾き飛ばされた。 志慶真川側から攻めたサタルーとマウシの兵たちは密林の急斜面を登っていた。密林が途切れた石垣の近くは木がなく、上から丸見えだった。丸見えの急斜面をよじ登らなければ石垣の下には行けない。急斜面なので『楯』を持って登る事はできず、皆、『鉄の兜』をかぶっていた。岩登り専用に工夫して鍛冶屋に作らせた兜で、上からの弓矢を避けられるようにできていた。 密林の中から出て、丸見えの急斜面に取り付くと石垣の上から『石』が落ちてきた。人の頭くらいの大きさの『石』が次々に落とされて、『石』に当たった兵たちは密林の中に落ちていった。 むやみに登っても負傷者が増えるだけなので、サタルーは密林の中に隠れたまま、石垣から顔を出した敵兵を弓矢で狙わせた。一人づつ倒して、敵の兵力を弱めてから登って行くしかなかった。 一時(二時間)の総攻撃で、どの部署も石垣に取り付く事はできなかった。『丸太車』は何とか回収する事ができたが、二人の兵が圧死していた。他にも『丸太』や『石』にやられて七人が戦死して、二十二人が負傷した。しかし、敵兵も同じくらいの被害が出ているはずだった。 『本陣』の志慶真大主の屋敷に大将たちが集まって、今後の対策を練った。 「昼間は無理だな」とサタルーが言った。 「『おとり作戦』を使って、夜襲を掛けるか」とサグルーが言って、皆の顔を見た。 「山グスクの兵たちの出番だな」とマウシが笑った。 山グスクの兵は真っ暗闇のガマ(洞窟)の中で五感を鍛え、真っ暗な夜に岩登りの訓練もしていて、夜目が利くようになっていた。 山グスクの兵を二つに分けて、志慶真川側の五十人をマウシが指揮を取り、左側の石垣を攻める五十人をウハ(久志之子)が指揮を取り、サタルーの兵とシラーとタクの兵はおとりとなって敵の目を引く事に決まった。 午後になって、『鉄炮』の音が響き渡って、本隊の攻撃が始まったが、搦め手で総攻撃は仕掛けず、『おとりの兵』を出して、それを狙う敵兵を倒していた。 夕方、本隊が『外曲輪』を攻め取ったとの知らせが入って、兵たちに知らせて士気を上げた。『勝連按司』と『越来按司』の戦死は、大将たちの胸に秘めて兵たちには知らせなかった。 『勝連按司』はジルムイの義父だった。戦死したなんて信じられなかった。山グスクにいる妻のユミが悲しむ顔が浮かんだ。妻のためにも、義父の敵を討たなければならないと誓ったジルムイは、兵たちに悟られないように涙を拭った。 日が暮れて、南の空に上弦の月が顔を出した。 各陣地は篝火をいくつも炊いて、敵の夜襲に備えた。 シラーとタクは志慶真曲輪よりも北にある『二の曲輪』の下辺りの森の中に『陣地』を移して、篝火を炊いた。長い竹の棒に『松明』を縛り付けて、『二の曲輪』の石垣の下の斜面を登る振りをした。石垣の上から弓矢が『松明』を目掛けて降って来た。夜の間、何度も何度もそれを繰り返した。 サタルーは同じやり方で『赤丸党』の者たちを使って、『御内原』の石垣の下を『松明』を持った兵が登って行く振りをした。石垣の上にいる夜番の敵兵たちは『松明』の動きに釘付けになっていた。 月が沈んで星明かりだけになった寅の刻(午前四時)頃、マウシに率いられた山グスクの兵たちが、『松明』を持たずに志慶真曲輪の急斜面をよじ登って石垣に取り付いた。上からの攻撃はなかった。マウシたちは石と石の間に『鉄の杭』を差し込んで足場を作りながら石垣を登って行った。この時も『御内原』の下では『松明』が動いていて、石垣の上から弓矢が撃たれていた。 石垣の上に登ったマウシたちは、敵兵を倒して『志慶真曲輪』に潜入した。山グスクの兵が次々に曲輪内に潜入して、敵兵を倒していった。 左側の石垣からも、ウハに率いられた山グスクの兵たちが石垣を登って曲輪内に潜入し、敵兵を倒して『御門』を開けた。待機していたサグルーとジルムイの兵が突入して、曲輪内で乱戦となった。激戦の末に、ジルムイが『諸喜田大主』を倒し、マウシが『謝名大主』を倒すと、生き残っていた十数人の兵は武器を捨てて投降した。諸喜田大主の家臣でナコータルー(材木屋の主人)の弟の『仲尾之子』は、山グスクの兵に倒された。 屋敷内と仮小屋にいた避難民たちを志慶真村に移して、サグルーは『志慶真曲輪』を占領した。 諸喜田大主の妻の『マカーミ』は子供たちと一緒に、戦死した諸喜田大主を抱いて泣いていた。大将なので丁寧に扱えとサグルーは命じて、諸喜田大主の遺体を志慶真村の空き家に移した。 夜が明けると戦死した敵兵の遺体を志慶真村の広場に集めて、武器や鎧を回収した。時々、『一の曲輪』から弓矢が飛んで来るので、気を付けながら行なった。 捕虜となった敵兵は十四人で、負傷兵は十二人、それ以外の者は戦死していた。味方の戦死者は四人で、負傷兵は九人だった。 志慶真曲輪のお清めをしてもらうために、『クボーヌムイ(クボー御嶽)』にいたヌルたちを呼んだ。十六人のヌルたちがぞろぞろと来たので、サグルーたちは驚いた。しかも、皆がお揃いの白い鎧を身に着けていて、その姿がよく似合っていた。 「おめでとうございます」と志慶真ヌル(シジマ)がサスカサ(島添大里ヌル)と一緒に挨拶に来た。 「シジマが『神人』になるなんて思ってもいなかったよ」とサグルーは言った。 シジマはサグルーより一つ年上で、サグルーが若按司として島添大里グスクに入った時、女子サムレーとして『キラマの島』からやって来た。サグルーの屋敷は東曲輪にあったので、与那原に移るまで、一緒に暮らしてきた身内のような者だった。 「鎧姿がよく似合っているよ」とサグルーは志慶真ヌルに言って笑うと、妹のサスカサを見た。 「こんなにもヌルがいたなんて知らなかった」 「みんな、按司たちを守るために一緒に来たのよ。あと七人いたけど、本隊の方に行ったわ」 「勝連ヌルと越来ヌル、それに叔母さん(安須森ヌル)も行ったようだな」 「伊波ヌル、山田ヌル、安慶名ヌル、浦添ヌルも一緒に行ったわ」 「按司が二人も亡くなるなんて信じられないよ」 「島添大里にいるマカトゥダル(勝連若ヌル)が可哀想だわ。山グスクの戦でお兄さんを亡くして、今回はお父さんが戦死したのよ。きっと、ササ姉(運玉森ヌル)が教えて、今頃、泣いているに違いないわ」 「『勝連按司』は誰が継ぐんだ?」とサグルーは聞いたが、サスカサは首を振った。 ヌルたちによるお清めが済んだあと、兵たちは一睡もしていなかったので、志慶真曲輪を守るサグルーの兵を除いて、皆を休息させた。 ヌルたちは志慶真ヌルの屋敷に入って休んだ。 本隊の攻撃が始まって『鉄炮』の音が響き渡った。サグルーは『一の曲輪』を攻撃するための『陣地作り』に専念した。志慶真曲輪の石垣の上は一の曲輪の石垣の上から狙われたので、『楯』を並べて弓矢を防いだ。曲輪内にも『楯』を並べて、敵からの攻撃を防いだ。一の曲輪に『投石機』を運び入れたのか、『石』も落ちて来た。 午後になって、ジルムイの兵たちと交代して、サグルーの兵たちは一眠りした。 サグルーが志慶真大主の屋敷で休んでいた頃、志慶真ヌルの屋敷では、『タマ(東松田の若ヌル)』が予見した事について、ヌルたちが話し込んでいた。 タマが見たのは、攀安知が『御内原』にある『アマチヂウタキの霊石』を真っ二つに斬ってしまうという場面だった。 タマは今帰仁グスクに入った事がないので、『御内原』にそんな『霊石』がある事は知らない。今帰仁グスクに入った事のある屋嘉比ヌルが、確かに『霊石』はあると言った。 「その『霊石』は『シネリキヨの神様』を祀っているのですか」とタマは屋嘉比ヌルに聞いた。 「今帰仁グスクは『シネリキヨのウタキ(御嶽)』だった所に造られたんだけど、その『霊石』は違うのよ。その『霊石』は『アキシノ様』をお祀りしているの。『アキシノ様』がお亡くなりになったあと、娘たちが母親の『御神体』としてお祀りして、今帰仁グスクの『守護神』となったのです」 「『霊石』が真っ二つになるとどうなるのですか」 「『アキシノ様』が危険な事になります」 「そんな事になったら大変だわ。何とか止める事はできないの?」とシンシン(杏杏)が言った。 「『アキシノ様』に聞いてみるのがいいんじゃないの」とナナが言って、志慶真ヌルがうなづいた。 みんなでぞろぞろと『クボーヌムイ』に戻って、『アキシノ』に聞いた。 「あの『石』はわたしの孫がヤマトゥ(日本)から持って来たのよ。『厳島の弥山』から持って来たらしいわ。わたしの『御神体』になっているから、傷つけば、わたしも傷つくと思うけど、刀で真っ二つになるなんてあり得ないわ。心配しなくても大丈夫よ」 アキシノはそう言ったが心配だった。『シネリキヨの神様』が攀安知に力を貸したら、『霊石』が真っ二つになってしまうかもしれなかった。 「ササ姉に知らせるわ」とタマが言った。 「それがいいかもね」とシンシンとナナが同意して、三人は安須森ヌル(先代佐敷ヌル)に相談するために外曲輪に向かった。 |
今帰仁グスク
志慶真村