しの木弘明著「境町人物傳」より

　◎伊与久村

• 宮崎有成（1774−1843）‥‥‥伊与久生まれの儒者。訊蔵、三浦、玉芝と号し、俳名を雲浪亭という。
  　　　　　1803年、五惇堂の創立に拘わる。
  　・宮崎有敬（1832−95）‥‥‥終吉。有成の６男。経世家。
  　　　　　1856年、北荘、細谷又内、宮崎悌助、兄俊蔵らと伊与久沼の浚渫を行う。
  　　　　　この頃、伊勢崎藩の御用達として出仕する。

• 深町重右衛門吉明‥‥‥関流和算学者で伊勢崎藩の教授。北荘の祖父。
  　�B深町北荘（1802−1870）‥‥‥重右衛門。伊与久に生まれる。
  　　　　　少年の頃より保泉村の鈴木広川について詩文経史を学び、さらに江戸に出て寺門静軒に入門。
  　　　　　郷里に帰った後、同村の詩人大谷尚古に師事する。
  　　　　　1819年、父文治が病気で倒れ、家を継ぎ、伊勢崎藩御用達を勤める。
  　　　　　金井烏洲に師事して南画を修める。吉沢糟溪と共に諸国に遊ぶ。五惇堂の教授。

• 深町甚右衛門義財‥‥‥周斎と号した医者。五惇堂の創立に加わる。
  　・深町矢柄（1831−1909）‥‥‥甚右衛門の次男。兼吉。平塚の田部井道場で念流を学ぶ。

• 吉沢糟溪（1801−76）‥‥‥一郎右衛門、俳号は一鳥。伊与久に生まれる。
  　　　　　北荘と共に鈴木広川、江戸の寺門静軒に師事する。五惇堂の教授。
  　　　　　1826年、10日程、相模大山に旅行し紀行文を書く。
  　　　　　1830年秋、父盛善（1751−）が没し、名主を勤める。
  　　　　　1836年、北荘と共に日光を旅する。1840年、北荘と西遊、遠く九州まで旅する。
  　　　　　1842年、師の寺門静軒が戯著により、江戸を追われ伊与久に来る。
  　　　　　1862年、北荘と共に奥州に旅する。

• 高井中斉（1775−1854.7.21）‥‥‥伊与久生まれの儒者。黙右衛門、微風、穀斎と号す。
  　　　　　五惇堂の創立に拘わり教授となる。

• 高井環（1770−1862）‥‥‥伊与久生まれの儒者。名を庄八、清閑斎と号す。五惇堂の創立に拘わる。

• 大谷謙（1774−1853.6.6）‥‥‥清吉、益左衛門、尚古堂。俳号を霞龍。五惇堂の創立に拘わる。
  　　　　　1808年、３月、伊勢崎藩主より伊与久村内肝煎役を仰せ付けられる。
  　　　　　1822年正月、名主役を務めている時、近火により家宅を全焼。

• 畑野連平（1775−1836）‥‥‥通称嘉平治。見龍斎と号す。伊勢崎藩に仕える武道家。
  　　　　　1801年、大橋順蔵より直心影流目録を得る。1818年、免許皆伝。
  　・畑野一刀斎（1807−45）‥‥‥和吉。自分の邸内に道場を構え、郷党に教授する。
  　　　　　父の死後、伊勢崎藩に仕え師範となる。
  　　・畑野連司（1837−1918）‥‥‥父が早く亡くなったので、伊勢崎藩の沢浦周吉に直心影流を学ぶ。
  　　　　　伊勢崎藩を放逐され、江戸に出て伝馬町の首斬り役人をする。

• 斎藤武八郎（1794−1881）‥‥‥畑野連平の道場で直心影流を学ぶが、
  　　　　　まもなく、隣村茂呂の五十嵐金弥に入門し気楽流を学び、免許皆伝を得る。
  　　　　　1830年、邸内に道場を開く。後、伊勢崎藩の師範になる。1845年、金弥　が死ぬと宗家を継ぐ。

• 大津黄雲（1796−1883）‥‥‥通称文右衛門、木白庵と号す。伊勢崎藩士。表千家流の茶道家。

• 細谷松堂（1828−1911）‥‥‥画家

　◎木島村

• 大谷紫陌（1767−1833.2.3）‥‥‥木島村の貧しい農家に生まれる。栗庵門下の四天王と言われた俳人。
  　　　　　助右衛門用七、玄々斎、柳陰と号す。
  　　・大谷助右衛門（1791−1848）‥‥‥1827年、伊勢崎藩の御領分取締役を仰せ付けられる。
  

• 高木孝助（1794−）‥‥‥伊之助。木島村の豪農。村役人を勤めながら紺屋を営み、元機屋を初めて始める。
  　　・高木周輔（1820−92）‥‥‥孝三郎。伊与久の斉藤武八郎に気楽流を学び、免許皆伝。
  　　　　　自邸に道場を設け、師弟を育てる。

• 高橋巍堂（1804−92）‥‥‥木島村生まれの教育家。邸内に私塾を設け経史と書道を教える。
  　　・高橋亘（1826−67.12.18）‥‥‥伴左衛門。巍堂の長男。斎藤武八郎に気楽流を学び、助教を勤める。
  　　　　　1863年、幕府浪士局の二番組として京都に上る。
  　　　　　しばらくして江戸に戻り、新徴組の柔術教授方となるが、一年後、脱走して三田の薩摩屋敷に入る。
  　　　　　出流山で挙兵するが幕府に敗れ、斬首される。

　◎保泉村

• 鈴木広川（1780−1838）‥‥‥四九郎。儒者。漂麦園広川と号す。

　◎小此木村

• 天田熊郊（1796−1876）‥‥‥竹治郎、通称源兵衛。烏洲の弟子。山水花鳥を得意とし、俳諧を万戸に学ぶ。

　◎島村

• 華竹庵万戸（1770−1832.5.18）‥‥‥金井文八郎、通称彦兵衛。島村の俳人。栗庵門下の四天王。養蚕長者。
  　　　　　妻は那波郡下道寺の医家多賀谷養元の娘春栄。春栄の従兄は能書家の多賀谷向陵で江戸に住む。
  　　　　　1815年、莎邨のため、呑山楼を築く。1825年、芭蕉碑を建立。その頃、華竹庵を築く。
  　・金井莎邨（1794−1824.3.14）‥‥‥万戸の長男。通称を丈太郎。詩人。
  　・金井烏洲（1796−1857）‥‥‥万戸の次男。左仲太、彦兵衛。画家、俳人。
  　　　　　1819年、江戸から帰り、武州新戒村の福島氏の娘、紀伊（1803−50）を妻とする。
  　　　　　1830年、前橋竜海寺の奕堂禅師に参禅し、小禅道人、獅子吼道人と号す。
  　　　　　1831年、高野長英、呑山楼に来る。入れ違いに渡辺華山も来る。その年の暮れ、梅陵と共に西遊する。
  　　　　　1834年、田崎草雲（1815−98）が入門する。1840年頃、草津に遊湯。
  　　　　　1836年頃より伊勢崎藩への莫大な貸金が貸し倒れとなり、破産状態となる。
  　　　　　1842年、江戸を追われた寺門静軒を呑山楼の客として迎える。
  　　　　　1853年、幕吏の嫌疑をさけ、之恭を連れて半年間、日光に隠れる。
  　　・金井之恭（1833−）‥‥‥文八郎。烏洲の４男。
  　　　　　大館謙三郎らと画策し、新田満次郎を擁して新田勤王軍を編成する。貴族院議員。
  　・金井研香（1806−79）‥‥‥万戸の四男。幾三郎。
  　　　　　江戸で二年間修行し、境町に借宅して筆学指南の看板を掲げ、子弟を教授する。

• 田島梅陵（1796−1866）‥‥‥弥兵衛。養蚕長者。博徒の群れに加わるが万戸の諌めにより、勉学に励む。
  　　　　　麦作を主とした島村農業を改め、盛んに桑を植えて養蚕を主業とし、奥州の飼育法を研究し、養蚕長者となる。
  　　　　　島村蚕種を開発する。
  　・田島弥平（1822−98）‥‥‥梅陵の長男。1854年、金井之恭と関西旅行。
  　　　　　1879年、蚕種を売るためイタリアに渡る。『養蚕新論』の著者。

• 島村伊三郎（1790−）‥‥‥島村立作生まれ。町田氏、代々船問屋を勤める。
  　　　　　隣村の武州牧西に兵馬がいて兄弟分として遊侠の群れに投じる。身丈が６尺あり、腕力に優れていた。

　◎境宿

• 織間桃中（1777−1844）‥‥‥茂吉。本家の織間文左衛門は酒造を業し、町役人本陣を勤める。

• 村上随憲（1789−65）‥‥‥蘭方医。俳号は米五。武蔵久下村に生まれ、長崎でシーボルトより西洋医術を学ぶ。
  　　　　　1828年、中沢茂七に招かれ、境宿で開業する。邸内に私塾を開き、多くの子弟を育てる。
  　　　　　大館霞城、黒田　桃民、金井之恭、桜井八郎らが出る。
  　・村上俊平（1839−65）‥‥‥随憲の３男。高山彦九郎に傾倒し尊王攘夷運動に加わる。
  　　　　　京都池田騒動の時、幕吏に捕われ、平野国臣らと共に斬殺される。

• 板垣信人（1814−80）‥‥‥常八。歌人。

• 斉藤文泰（1837−1882）‥‥‥学問と医術を村上随憲に学び、斉藤武八郎に気楽流を学ぶ。

　◎下武士村

• 石原佐市（1789−1871）‥‥‥1816年頃、霜に強い『佐市桑』を開発する。
  　　・石原束（1834−1921）‥‥‥佐市の孫。伊之助。弓術の達人。

　◎下渕名村

• 弥勒寺音次郎（1796−69）‥‥‥宮大工。下淵名の小林新七の弟子となり、婿養子となる。
  　・弥勒寺音八（1821−87）‥‥‥宮大工。梅雪と号す。

• 加藤勝馬（1810−94）‥‥‥勝之進。茂呂村の五十嵐金弥、伊与久村の斎藤武八郎に気楽流を学ぶ。
  　　　　　伊与久村の吉沢糟溪に経史を学ぶ。岩松家にも出張し満次郎に指南する。

　◎萩原村

• 不流三左衛門（1773−1833）‥‥‥福島庄吉。六代目の香具師の親分。
  　・不流三左衛門（1804−74）‥‥‥７代目。縄張りは百余村、子分は300人。
  　　　　　1833年頃、妾の取りっこで国定忠治と西今井前で対決し、忠治を圧倒する。

　◎新田郡田中村

• 大館謙三郎（1824−1875）‥‥‥霞城と号す。幕府の昌平黌に学ぶ。浪之局二番組の小頭。
  　境町の斎藤文泰（1837−1882）、村上俊平（1839−65）、伊与久の粟田口立五郎（1820−74）、
  　深町矢柄（1831−1909）、木島の高橋亘（1826−67）、下武士の石原束（1834−1921）ら浪士局にいた。