酔雲庵


酔中花

井野酔雲





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 どう、元気でやってる?

 あたし、疲れちゃった。やっぱり、人間は面倒見きれないわ。

 あの昭雄って子、わりと素直だし可愛いかったけど、あれじゃあ、ちょっと見込みはないわね。せっかく、あたしがチャンスをあげたのに、あの麗子って娘の顔を見た途端に、あたしの事もあたしがしゃべった事もすっかり忘れちゃったわ。何があたしの顔と麗子の顔が似てるよ、どこが似てるっていうの。冗談じゃないわ。あたしをあんな小娘と一緒にしないでちょうだい。

 最近のガキはまったく見る目がないわ。あんな節穴みたいな目をして、何が絵を描くよ、笑わせないでちょうだい。

 あ〜あ、面白くない。

 あら、噂をすれば二人が来たわ。まあまあ、楽しそうに仲がいいこと。

「ねえ、見て、綺麗な花が咲いてるわ」

 あら、以外ね。麗子って娘、あたしに気がついたわ。へえ、結構、いい娘じゃない。昭雄なんかに勿体ないわ。

「そんな花なんかより、麗子さんの方がずっと綺麗ですよ。早く行きましょう」

 まあ、何、あれ。あの馬鹿、よくもそんな事が言えたわね。あたしより麗子の方が綺麗だって‥‥‥くそったれが‥‥‥まあ、麗子の方はいいのよ。ちゃんと、あたしに気がついたし、心が綺麗なんだわ。だから、麗子は綺麗よ。それに比べ、昭雄はまったく駄目ね。もう救いようがないくらい馬鹿よ。あたしを見ようともしない。もっとも、見ようとしても、あの馬鹿には見えないでしょうけどね‥‥‥

 まったく、あの馬鹿、鼻の下を伸ばして、「麗子さん、麗子さん」だって‥‥‥

 ああ、腹が立つ。もう二度と人間なんかと遊んでやらないから、畜生。

 酒、かっくらって、もう寝るわ!




瑞泉 青龍




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