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あああああああああ‥‥‥退屈だ‥‥‥ 酔雲爺さん、また、山を下りちゃったわ。寒くなるから、あったかい所に行くんだってさ。まったく、年寄りはやだね。 毎日、面白かったのにな。 フェラなんてもう、ずっと、あの爺さんから離れないんだから。あたし、もう、頭に来て、彼女と絶交しちゃった。 人間嫌いのユーナでさえ、あの爺さんの事、好きになっちゃうんだから、どういうんだろ。 ローダはローダで、あの爺さんに色目使って挑発するし、すると、爺さんはホイホイとローダの所に行って、すけべごっこをする。するとフェラは大声を出して泣く。あたしはローダと喧嘩する。爺さん、今度はユーナの所に行って楽しそうに酒を飲んでいる。泣いてるフェラも喧嘩してるあたしとローダも馬鹿みたい。 最初はあたしたち四人で、あの爺さんをからかってやろうと思ったのよ。それが、どこでどう間違えたのか、結局、最後には、あたしたちみんな、あの爺さんに丸め込まれてるんじゃない。まったく、どうなってんだろ。ほんとに、あの爺さん、人間なのかしら? あああ、その爺さんもフラッとどっかに行っちゃうし。来る時はちゃんと、あたしに挨拶してくのに、山を下りる時はいつも、あたしの知らないうちに消えちゃうんだから。まるで、お化けみたい。 フェラなんて、まだ毎日、めそめそ泣いてるわ。ユーナなんか、すっかり人間大好きになっちゃって、毎日、人間をからかって遊んでるのよ。ローダは昔から馬鹿だから、あまり変わりはしないけど、ユーナと一緒になって遊んでるみたい。人間も可哀想ね。あんなローダなんかの相手になったら、精気をみんな吸い取られて骨と皮だけになっちゃうわ。あたしの爺さんをみんなに紹介したのは、今思えば間違ってたのね。 あああ‥‥‥出るのは溜め息ばかり‥‥‥ あっ、人間が来たわ。女の子よ。スケッチブックなんか抱えている。もしかしたら、あの爺さんと関係あるのかしら? まあ、そんな事、どっちでもいいわ。今は人間と遊ぶ気になんかなれないわ。わりと可愛い娘ね。でも、あたしに気づかないで行っちゃった。 さてと、昼寝でもしよう。
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4
久美子は酔雲の山小屋の前で立ち止まった。 「ごめん下さい」 返事はない。 窓から中を覗いてみる。誰も見えない。 入口を開けようとしたら、簡単に開いた。 中を覗く久美子。 描き損じの絵や紙くず、ゴミ、からの一升瓶が散らかっているだけで誰もいない。 中に入る久美子。 散らかっている絵を手に取って見つめる。 次々と熱心に絵を見つめる。
小屋の中は綺麗に片付いている。 何枚かの絵を目の前に並べて、久美子はパンをかじっている。 自分のスケッチブックから一枚の絵を取り出し、目の前の絵と比べてみる。 久美子の取り出した絵には酔雲とサインがある。どの絵も水墨で風景を描いた物で、筆数少なく単純に描かれてある。どの風景にも小さく人物が描かれてあり、自然の中で、その人物が生きている。 久美子はパンを食べるのも忘れて、じっと絵を見つめている。
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5
スケッチブックを抱えた久美子が山道を歩いている。 道端に咲く小さな綺麗な花を見つけ立ち止まる。 (あら、この娘、あたしに気づいたわ) 久美子、しゃがみ込んで、その花を観察する。 (どうするつもりかしら? まさか、酔雲爺さんみたいに、あたしをくすぐるんじゃないでしょうね) 久美子はスケッチブックを開いて、その花をスケッチする。 (あたしを描いてるわ。あたし、気に入ったわ、この娘。この娘と遊ぼう) 久美子は描き終わると、「可愛い」と言って、花びらを軽く撫でて立ち去った。 (やだ、くすぐったいわ。可愛い顔して、あたしの事、可愛いだって、どうしよう‥‥‥)
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