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あくる日の早朝。 旅支度の鉄蔵と久美子。 お栄は久美子の背中で眠っている。 鉄蔵は入り口の戸に紙を貼りつけた。 「主人北斎旅行中」と書いてある。 鉄蔵、むっつりとうなづいてから歩き出す。 久美子はニコニコしながら鉄蔵の後をついて行く。
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再び、ここは品川宿。 鉄蔵はむっつりしたまま歩いて来る。 その後ろを久美子と馬琴とお辰夫婦が楽しそうに話をしながら歩いて来る。 「おめえたち、どこまでついて来るんだ?」と鉄蔵が後ろを振り向かずに言った。 「父ちゃん、素直になんなよ」とお辰は言う。「本当は、お姉さんと一緒なんで嬉しいくせに」 「うるせえ、さっさと帰れ」 「それじゃあ、あたしらはこの辺で帰るとするか」と馬琴。 「お栄ちゃん、元気でね、お姉さんも‥‥‥」とお辰。 「おかみさん、体に気をつけてな」と馬琴。 「ええ、皆さんもお元気で‥‥‥」と久美子。 鉄蔵はさっさと歩いて行く。 「皆さん、ありがとう。それじゃア」と久美子は頭を下げる。 「元気でね」とお辰は手を振る。 うなづく久美子、鉄蔵の後を追う。 鉄蔵に追いつき、後ろを振り向く久美子。 手を振る馬琴とお辰夫婦。 手を振る久美子。 久美子の背中でニコニコしているお栄。 旅立つ親子三人。
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東海道、神奈川宿。 絵を描いている鉄蔵。 楽しそうにはしゃいでいる久美子。 笑っているお栄。
東海道、藤沢宿。 絵を描いている久美子。 楽しそうにはしゃいでいるお栄。 笑っている鉄蔵。
東海道、小田原宿。 絵を描いているお栄。 楽しそうにはしゃいでいる鉄蔵。 笑っている久美子。
京都を目指して三人の旅は続く。
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