首里のお祭り
朝早くから 今日は ヤマトゥ(日本)旅から帰って来たマウシ(真牛)は首里の城下に屋敷を与えられて、シラー(四郎)とマサルー(真申)の 一緒にヤマトゥに行ったジルムイ(次郎思)も首里の城下にできた 今日はお祭りなので、読み書きも武術の稽古も休みになった。マウシは苗代大親の娘、マカマドゥ(真竈)を誘ってお祭り見物を楽しもうと朝から浮き浮きしていた。 ヤマトゥから帰って来て、マウシはマカマドゥと試合をした。マカマドゥから試合を申し込まれたのだった。マカマドゥはマウシが自分よりも強かったらお嫁に行くとはっきりと言った。そして、あたしよりも弱かったら、あたしの事はきっぱりと忘れてねとも言った。前回と同じように娘たちの見守る中、竹の棒で試合をして、マウシはマカマドゥに勝っていた。ヤマトゥ旅の最中も、剣術の稽古は怠りなくやっていて、その成果が現れたのだった。その時、ササ(笹)とシラーも試合をした。シラーもマウシと一緒に稽古に励み、ヤマトゥに旅立つ前より、かなり腕を上げていた。しかし、ササにはかなわなかった。マウシも初めてササの強さを目の前で見て、もしかしたら、自分もササには負けるかもしれないと思った。 サグルーとマウシの妹のマカトゥダル(真加戸樽)はうまくいっているようだった。サグルーの妻になると決心をしたマカトゥダルは剣術の稽古を始めた。サグルーの母親、マカトゥダルから見れば叔母のマチルギ(真剣)は剣術の名人だった。自分も剣術を身に付けなければ、叔母に認めてはもらえないと思ったのだった。今まで、木剣など持った事のなかったマカトゥダルは老山伏のクラマ(鞍馬)の指導のもと、朝から晩まで剣術の修行に励んだ。自分でも不思議に思うが、剣術の修行は楽しかった。自分にも叔母と同じ血が流れているんだと思うとマカトゥダルは嬉しかった。 グスクから聞こえてくる太鼓の音を聞きながら、 「俺はマカマドゥを誘ってお祭りに行くが、お前はササを誘うのか」とマウシがシラーに聞いた。 「ササは首里にはいない。佐敷だろう」 「お祭りなんだ。首里に出て来るだろう」 「最近、ササはおかしいんだ。俺を見る目が以前とは違うんだよ」 「お前がササに負けたからだろう。お前がマレビト神じゃないと思い始めたのかもしれんな」 「ササが強すぎるんだ。あんなにも強いとは思わなかった」 「確かにな、俺も驚いたよ。ササは気まぐれだからな、何を考えているのかわからん。 「そうだな」 シラーの父のマサルーは夜が明ける前に出掛けて行った。お祭りの間、首里グスクの 刀を腰に差して出掛けようとした時、屋敷の外で、マウシとシラーの名を大声で呼んでいる者がいた。 マウシとシラーは顔を見合わせて笑った。声の主はササだった。 外に出ると村娘の格好をして、四尺ばかりの棒を持ったササがいた。 「お祭りに行くわよ」とササは言った。 「お前、やっぱり、首里にいたんだな」とマウシが言った。 「マカマドゥのおうちに泊まったのよ」 「マカマドゥと一緒にいたのなら、どうして、マカマドゥを連れて来ないんだ」 「マカマドゥは 「何だって! どうして、御内原に行くんだ?」 「御内原の警固をするためよ。 「そんな‥‥‥」とマウシは嘆いた。 「お前、マカマドゥと一緒にお祭り見物をしようと思っていたのね」 そう言ってササは大笑いした。 「今回のお祭りは庶民たちを楽しませるためのお祭りなのよ。身内の者が楽しむためじゃないの。あたしたちも敵が侵入しないように見張りをするのよ。そんなサムレーの格好じゃ駄目。庶民の格好をして、怪しい奴を捕まえるのよ」 マウシとシラーはブツブツと文句を言いながらも、ササの言う通りに庶民の格好に着替えて刀も差さず、杖代わりの棒を持って首里グスクへと向かった。 「本当に敵は侵入して来るのか」とマウシは歩きながらササに聞いた。 「絶対に来るわ。誰でも西曲輪に入れるのよ」 「西曲輪に入れても、そこから先へは行けないだろう」 「華麗な 「敵の目的は?」とシラーが聞いた。 「多分、 「敵とは誰なんだ?」とマウシは聞いた。 「 「面白そうだな」とマウシは笑ってから、「ジルムイも誘おうぜ」と言った。 「ねえ、ヤマトゥ旅で何があったの? 旅から帰って来てジルムイは変わったわ。それに、お前とジルムイも以前と違って、仲良しになっている」 「色々とあったのさ。苦労を共にした仲間だよ」 「ふーん」と言って、ササは意味ありげに笑った。 島添大里按司の屋敷に寄って、ジルムイを誘った。ジルムイも庶民の格好に着替えて、 「さすが、ジルムイね。髪型までは、あたしも気づかなかったわ」とササは満足そうに三人の姿を眺めた。 首里グスクは朝早くから賑わっていた。普段は入れないグスクの中に入って、噂の御殿が見られるというので、城下に住む人は勿論の事、佐敷や島添大里からも見物に来ていた。 開いたままの大御門の左右に 広い西曲輪内には舞台が作られ、あちこちに炊き出しの屋台が置かれて、酒や食べ物が振る舞われていた。賑わっていると言っても、まだそれ程の人出はなかった。百人はいないだろう。舞台でもまだ何もやってはいなかった。 ササたちは一通り、西曲輪内を歩いて、どこに何があるのかを確認した。酒を配っている屋台にマサルーがいた。商人のような格好をして、二人の娘と一緒に、ニコニコしながら酒を配っている。 「親父、何をしてるんだ?」とシラーが声を掛けた。 「おう、お前らも来たか。お祝いだ。まあ、一杯やれ」 「グスクの警固をしなくてもいいのか」 「何を言っている。こうやって、怪しい奴がいないか見張っているんだ」 「と言うことは、おじさん、屋台をやっているのはみんな、警固の人たちなの?」とササが聞いた。 「そうじゃ。この二人は 「お前たちもそんな格好でやって来るなんて、なかなかやるじゃないか」 酒を一杯づつ飲んで、隣りの屋台に行くと 「どうして、こんな所にいるんだ?」とマウシは驚いた顔をして聞いた。 「御内原よりここのが面白そうだから、こっちにしたの」とマカマドゥは言って、「舞台も見られるしね」と楽しそうに笑った。 マカマドゥと一緒にいるのはマカマドゥの兄のマガーチ(真垣)と、顔は見覚えあるが名前までは知らない女子サムレーだった。 マガーチは 西曲輪の一番奥には 舞台に行くと佐敷ヌルが開演の準備をしていた。今日の佐敷ヌルはヤマトゥ風の着物を着ている。佐敷ヌルは何を着ていても美しかった。 「もうすぐ始まるわよ」と佐敷ヌルは言った。 六歳になる娘のマユ(繭)とその父親のシンゴ(早田新五郎)も一緒にいた。マウシたちはシンゴに頭を下げた。ヤマトゥ旅では大変お世話になっていた。 「お前たちも見張りをしているのか」とシンゴが聞いた。 「勿論ですよ」とマウシは調子よく答えた。 「 「見事に海賊どもを追い払ったお前たちなら、わけない事だろう。頑張れよ」 「海賊退治をしたの?」とササがマウシに聞いた。 「京の都に行く途中、海賊どもが現れたんだ。簡単に追い払ってやったのさ。と言いたいけど、本当は死に物狂いで戦ったんだ。もう少しで殺されるところだった」 マウシがそう言うと、「あの時、実戦の恐ろしさを初めて知ったんだ」とジルムイが言った。 「危ない目に遭って来たのね」とササは三人を見て笑った。その笑顔はいつもの馬鹿にしたような笑いではなく、無事でよかったわねと言っているようだった。 舞台から離れて、 太鼓の音が止まって、 舞台を眺めながら、「 「出て来ないわよ」とササは首を振った。 「王様が出て来たら、みんな、土下座しなくちゃならないでしょ。お祭りが台無しになるわ」 「そうか。王様は御殿の中から見守っているのだな」 マウシは御殿を見た。あそこからでは舞台の様子はわからないだろう。大勢の 佐敷ヌルの挨拶が終わると、着飾った女たちが出て来て踊りを披露した。 「見張りを開始するわよ」とササが言って、三人の男たちがササに従って見回りを開始した。 正午まで、見回りを続けたが怪しい者は見つからなかった。西曲輪の中は人であふれているが、武器らしい物を持っている者はいないし、怪しい素振りを見せる者もいなかった。皆、お祭りを楽しんでいる家族連ればかりで、人々の顔は幸せそうだった。 舞台では村娘たちが陽気に踊っていた。各村々から選ばれた娘たちが、それぞれ工夫した衣装を身につけて、その村で歌われている歌に合わせて踊っている。楽しそうに一緒に踊っている見物人もいた。 「どうやら、ここには現れそうもないわね」とササが人々を眺めながら言った。 「もうやめるのか」とシラーが聞いた。 「きっと、 「まさか?」とマウシがそんな事があるわけないといった顔をして首を振った。 「 「側室というのは 「そうよ。みんな、十七、八の娘で、王様から見たら孫みたいな 「 「当然でしょ。選ばれた娘たちなのよ」 「凄えなあ。美女が八人か」とシラーがポカンとした顔をして言った。 「その側室たちが怪しいのか」とジルムイが聞いた。 「そうじゃないわよ。側室は人形みたいなもの。何もできないわ。問題は側室に付いて来た侍女たちなのよ」 「なあ、王様はその美女たちを抱いたのか」とシラーが聞くと、ササは怖い顔をしてシラーを睨んだ。 「そんな事、知らないわよ」とササはシラーに強い口調で言った。 「王様に側室を贈った者の中には山北王と山南王もいるの。山北王と山南王から指示を受けた侍女たちが騒ぎを起こすかもしれないわ」 「敵の 「女子サムレーが見張っているから大丈夫だと思うけど、何だか嫌な予感がするの。あたしたちも行ってみましょ。ただ、シラーは入れないわ。ここで見張っていて」 「何で、俺は入れないんだ?」 「今日は 「わかったよ」とシラーは少しすねた顔をして手を振った。 ササとマウシとジルムイの三人はシラーと別れ、西曲輪から出て東御門に向かった。石段を登った上にある東御門は閉ざされ、四人の御門番が長い棒を持って立っていた。ササが御門番に三つ巴が描かれた木の 「王様のお孫さんのジルムイとその 御門番はジルムイとマウシの格好を眺めながら、通していいものか 「今まで、西曲輪を見張っていたので、こんな格好をしているの。信じられないのなら、奥方様を呼んで来て」 御門番はうなづいて、御門の中に消えた。しばらくすると奥方様(マチルギ)が現れた。 「あんたたち、何をやっているの?」とマチルギは聞いた。 「 「嫌な予感?」と言ってマチルギはササを見て、うなづくと御門番に通すように告げた。 東御門の中は左側にずっと板塀が続いていて、その中が御内原だった。マウシは以前、マチルギに案内されて入った事があるが、今日、入れるかどうかはわからない。右側は 「嫌な予感ってどういう事なの?」とマチルギはササに聞いた。 「ここで誰かが殺されるわ」 「ここって、百浦添御殿の中で殺されるの?」 ササは真面目な顔をしてうなづいた。 「誰だかわからないの。多分、あたしの知らない人だと思うわ」 「という事は 「刺客かもしれないし、誰かが刺客の犠牲になるのかもしれない。王様は何をしているの?」 「 「そう」 「百浦添御殿の二階には王様と志佐様しかいないわ。時々、侍女がお食事やお茶を運ぶけど、二階への階段は厳重に固めているから 「ササから聞いたんだけど、王様の側室が八人もいるんだって」とジルムイが母親のマチルギに聞いた。 余計な事を言うなというようにササを睨んだあと、マチルギはうなづいた。 「贈られた者を返すわけにもいかないので、御内原に入れたけど、まったく困ったものよ」 「山北王と山南王が贈った側室もいるらしいじゃないか」 「中山王になったお祝いと言って贈ってよこしたのよ。勿論、こっちからもそのお返しに側室を贈ったからおあいこね」 「こっちからも敵に側室を贈ったのか」 「そうよ。お互いに敵の様子を探るために側室を利用しているのよ」 「他には誰が贈ってきました?」とササは聞いた。 そんな事までジルムイに言いたくはなかったが、ササの真剣な顔を見て、マチルギは説明した。 「まず最初に贈って来たのは 「山南王、山北王、米須按司の三人が怪しいわね」とササが言うと、 「わかっているわ」とマチルギはうなづいた。 「ササの予感が当たらないように頑張るわ。あなたたちは西曲輪の方を頼むわね。向こうで何か騒ぎを起こして、こちらの曲者が動き出すかもしれないから」 ササは素直にマチルギにうなづいたが、「でも、あの中を一回りさせて」と百浦添御殿の方を見た。 マチルギは仕方ないというようにうなづき、先に立って案内した。 百浦添御殿の中は薄暗く、女子サムレーだらけだった。これではとても侵入などできないだろう。二階へと続く階段は三か所あり、中央の階段は王様専用で、左右の階段が侍女や女子サムレーが利用する階段だった。一番奥の階段まで来た時、一人のヌルが階段を上がって行くのが見えた。 「あれは?」とササがマチルギに聞いた。 「二階に祭壇があって、お香を絶やさないように定期的にヌルが上がって行ってお祈りをしているの」 「あのヌルは大丈夫なの?」 「大丈夫よ。 「浦添のヌルなのね?」とササは重ねて聞いた。 「大丈夫よ。 その時、上から、「誰か来てくれ!」とヤマトゥ言葉が聞こえた。 マチルギはすぐに階段を上った。マチルギに従って、ササ、マウシ、ジルムイと続き、女子サムレーたちも階段を上がった。 二階は明るかった。すでに、中央の階段から上がってきた女子サムレーが呆然と立ち尽くしていた。 窓側に碁盤が置いてあり、そのそばに首の後ろを斬られた王様がうつぶせに倒れていた。倒れる時に散らかしたのか、碁石があちこちに飛び散っている。王様の後ろには先程のヌルが首から血を流して倒れている。ヌルの首から飛び散った血が碁盤の上まで飛んでいた。 「何があったのです?」とマチルギが志佐壱岐守に聞いた。 志佐壱岐守は倒れているヌルを指さして、「あいつが突然、王様に斬りつけたんじゃ」と言った。 「近づいて来る時におかしいと思わなかったのですか」 「あのヌルはよく、ここに来る。王様とも親しげに話をしておった。碁を覗きに来ても別に怪しいとは思わなかったんじゃ。それが、突然、斬りつけてきたんじゃ」 「ヌルは自害したのですか」 「逃げられんと思ったのじゃろう。わしが叫んだあと、自ら首を斬っていた」 馬天ヌルがやって来た。悲惨な光景を見て、言葉を失い立ち尽くした。 「スズナリが‥‥‥スズナリが‥‥‥」と馬天ヌルは言っていた。 「大変な事になったわ。王様が殺されたのよ。一体、どうしたらいいの?」と言いながら馬天ヌルはマチルギを見た。 マチルギは倒れている王様の顔を上に向けた。 「えっ、まさか‥‥‥兄じゃないわ」と馬天ヌルは言った。 「ええっ?」とみんなが驚いて、王様の顔を見た。よく似ているが王様ではなかった。 「一体、どういう事なの? 兄はどこに行ったの?」 マチルギは説明した。 王様の マチルギは思紹から相談されて困ったが、イーカチが思紹は絶対に守ると約束したので、思紹のわがままを許す事にした。本物の王様が百浦添御殿や御内原内をうろうろしているよりも、偽者が百浦添御殿の二階にずっと籠もっていた方が守りやすかったからでもあった。 偽者の王様はヤマトゥ僧の格好をして以前から出入りさせていた。顔をよく見られないように、いつも頭巾をかぶっていた。御門番にはヤマトゥの偉い僧は頭巾をかぶっているので、そのまま通すようにと言ってあった。 お祭りの朝、偽者は従者を連れてやって来た。思紹は偽者と入れ替わり、志佐壱岐守の連れのジクー(慈空)禅師と、偽者が連れて来た従者と一緒にグスクから出た。従者はイーカチだった。 その後、三人がどこに行ったのかはマチルギも知らなかった。 「兄が無事でよかった」と馬天ヌルはホッと一安心した。 「でも、スズナリはどうして今日、この日に狙ったの? いつでもやろうと思えばできたのに」 「多分、王様が殺されれば、お祭りが急遽、中止になると思ったんじゃないかしら」とマチルギが言った。 「お祭りが中止になるとどうなるの?」 「首里で一大事が起こったに違いないと噂になるわ。王様の死を隠しておけなくなると思ったのよ。もし、お祭り以外の日に殺したとしても、内密に処理されると思ったんじゃないかしら。 「そうね‥‥‥でも、スズナリは誰の指図でこんな事をしたのかしら? スズナリを入れたのはわたしの失敗だわ。幸いに兄は助かったけど、許されない失敗よ」 「そんな事はないわ。わたしもスズナリの事は調べたわ。何も怪しい所は見つからなかった。敵が巧妙だったのよ」 馬天ヌルはスズナリを見ながら首を振っていた。 二つの遺体を運び出し、 ササ、マウシ、ジルムイはグスクから出て、馬に乗って佐敷へと向かった。思紹が行くとすれば、様々な思い出がある馬天浜に違いなかった。 思った通り、思紹は馬天浜のウミンター(思武太)の屋敷の離れでヤマトゥンチュの船乗りたちと一緒に酒を飲んで騒いでいた。ジルムイはそんな祖父の姿を見て、自然と笑いがこみ上げて来ていた。王様の格好をしてグスクの中にいるよりも、今の祖父の方が祖父らしいと思っていた。 ジルムイがここに来るのは久し振りだった。子供の頃、兄のサグルーとササと一緒にここに来ては遊んでいた。お陰で、自然とヤマトゥ言葉を覚えていた。父も子供の頃、佐敷ヌルと一緒にここに来て遊んでいたという。祖父は祖母と一緒になって、 「王様と一緒にいるイーカチというのは何者なんだ?」とマウシがササに聞いた。 「 三星大親と言えば、マウシたちが島添大里にいた時、お世話になったおかみさんの夫だった。 「地図を作っている人なのか」とマウシが言うと、ササは楽しそうに笑った。 「それは表の顔よ。三星大親は『三星党』という裏の組織のお頭なのよ」 「裏の組織?」 「そう。王様が首里グスクを奪い取る事ができたのも、三星党のお陰と言っても言い過ぎじゃないわ。三星党は密かに敵の情報を集めたり、時には敵のグスクに忍び込んで暗殺もする集団なのよ」 「そんな集団がいたのか」 「表の組織だけでは戦には勝てないわ。裏の組織が活躍しなければならないの。王様を密かに守るのも仕事よ。だから、三星大親は世子の ジルムイも三星党の事は知らなかった。そんな組織があったなんて凄いと感心していた。 ササが思紹の耳元で、首里の事を告げると、思紹は顔色も変えずにうなづいた。そして、しばらくして席を立つと海辺へと向かった。ササが思紹のあとを追った。それを見ていたマウシとジルムイも海辺へと向かった。 「刺客は誰が送ったんじゃ?」と思紹はササに聞いた。 「わかりません。何も話さず、自ら命を絶ちました」 「そうか‥‥‥あいつがやられたか‥‥‥すまん事をしてしまった」 しばらく、海を見つめていた思紹は振り返った。 いつの間にか、イーカチが来ていた。 「あいつの家族のために、できるだけの事をしてやってくれ」 「かしこまりました」とイーカチは頭を下げた。 |
首里グスク
馬天浜