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◆日本脳炎 | 病原体 | ‥‥‥ | 日本脳炎ウイルス。 | ||
致死率 | ‥‥‥ | 35% | |||
感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ |
コガタアカイエカなどが媒介。 |
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潜伏期間 | ‥‥‥ |
7〜15日。 |
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主な生息地 | ‥‥‥ |
日本、東アジア、東南アジア、中国、インド。 |
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症状 | ‥‥‥ |
頭痛、吐き気、高熱、意識の混濁、痙攣、異常運動。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
特になし。 |
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危険レベル | ‥‥‥ | ◆◆◆◆ | |||
・ |
発病は普通、突然の発熱で始まる。2〜3日で40度以上に達し、頭痛、吐き気、頭の頂部硬直という症状がでる。意識の混濁や昏迷、痙攣が起こり、重いと死亡する。60歳以上の高齢者が発病すると死亡する確率は高い。 |
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◆結核 | 病原体 | ‥‥‥ | 結核菌(細菌)。 | ||
致死率 | ‥‥‥ | 5〜50% | |||
感染力 | ‥‥‥ | ★★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ | 飛沫感染。 | |||
潜伏期間 | ‥‥‥ | 約4〜6週間。 | |||
主な生息地 | ‥‥‥ | 世界各地。 | |||
症状 | ‥‥‥ |
咳、痰、微熱、全身倦怠感など。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
抗結核薬の内服など。 |
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危険レベル | ‥‥‥ | ◆◆◆ | |||
・ |
日本では明治、大正、昭和と過去数10年間にわたり結核の流行が続き、1950年まで結核による死亡は死亡原因の第一位を占めていた。その後、結核の治療薬の普及、検診やBCGの接種による予防の徹底、また衛生状態や生活水準の向上などに伴って結核死は急激に減少した。しかし、1980年を境に急増している。 |
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◆腸チフス | 病原体 | ‥‥‥ | 腸チフス菌(細菌)。 | ||
致死率 | ‥‥‥ |
適切な対応が行われれば1%以下。 |
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感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ | 患者や保菌者の糞便、尿で汚染された水や食品を食べる事により発症。患者や保菌者との接触感染も起こり得る。 | |||
潜伏期間 | ‥‥‥ | 2週間前後。 | |||
主な生息地 | ‥‥‥ | 世界各地。 | |||
症状 | ‥‥‥ |
発熱、下痢、腹痛、腸から出血。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
抗生物質の投与と水分の補給などの対症療法。 |
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危険レベル | ‥‥‥ | ◆◆◆ | |||
・ |
最初に現れる頭痛や喉の痛み、便秘、食欲不振、腹痛といった症状は、これが腸チフスの症状とは思えないほど穏やか。だが、2〜3日の間には39〜40度の発熱が始まり、2週間ほど上がったままになる。この発熱はかなり頑固なもので、アスピリンのような普通の消炎鎮痛剤では数時間しか効かない。腸チフス菌に効く抗生物質を使って菌をたたいても熱が下がるまでに早くて3〜4日かかる。長時間の発熱のため全身の衰弱が激しく、重いケースでは麻痺や昏睡なども起こす。また2週間位発熱が続いた頃、一部の患者には胸や腹にピンク色の発疹が現れる。熱が低くなって来た頃、血液を含んだ下痢が起こる。患者の10%F大出血し、そのために命を落とす事もある。腸に穴があき、緊急に手術が必要になるケースもある。このように腸に特異的に症状が現れるのは菌が腸に感染して潰瘍を作り、回復期にそこが破れやすくなるため。治療が遅れると腸のダメージがひどくなり、大量の出血などで死亡する率が高くなる。そのため抗生物質が行き渡らない時は致死率は10%以上の怖い病気だった。特に栄養失調の患者や子供、高齢者では死亡率が高かった。今でも麻痺や昏睡は重症で命に関わる事がある事を示すサインになっている。 |
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◆赤痢 | 病原体 | ‥‥‥ |
赤痢菌(細菌)。 |
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致死率 | ‥‥‥ |
死亡はまれ。 |
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感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ |
患者や保菌者の糞便から直接あるいは間接的に感染。 |
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潜伏期間 | ‥‥‥ |
1〜5日。 |
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主な生息地 | ‥‥‥ | 世界各地。 | |||
症状 | ‥‥‥ |
発熱、腹痛、膿粘血便の下痢。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
ホスホマイシンなどの抗生物質の投与。 |
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危険レベル | ‥‥‥ |
◆◆◆ |
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・ |
赤痢の症状の特徴は発熱や腹痛、さらに膿や粘液、血液の混ざった水のような下痢。感染してから2日前後に急に発病する。一般に熱はそれほど高くはならず、時には胸焼けのような不快感や嘔吐も伴う。腹痛は左の下腹部に見られる事が多い。かつては一日20回以上も便意を催し、ついには出る便もなくなって粘液や膿の混ざった血液を少し出すだけの重症患者も多かった。1945年には約10万人の赤痢患者のうち2万人が死亡していたというから、その威力がうかがえる。だが、抗生物質の登場により63年以後は死亡者数は1000人を割り、75年以後は赤痢が原因で死亡する人はわずか十数名、あるいはそれ以下というのが現状。赤痢菌は1898年に志賀潔という日本人により発見される。赤痢菌が分類される属の名称Shigellaは発見者である彼の名前Sigaをとって命名されている。現在、赤痢菌はその性状からA群(志賀菌)、B群(フレクスナー菌)、C群(ボイド菌)、D群(ソンネ菌)の4つのタイプに分かれる。赤痢は患者を隔離病舎などにいれなければならないとされる法定伝染病だ。患者や保菌者の糞便から感染する。便に汚染された手指や飲食物、食器、水、ハエなどが感染源となる。赤痢菌に感染した人が排便後、手をきちんと洗っていなければ、その手で触ったトイレのドアの取っ手やタオルを使っただけで感染する可能性がある。 |
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◆破傷風 | 病原体 | ‥‥‥ |
破傷風菌(細菌)。 |
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致死率 | ‥‥‥ |
約50%(ワクチン非接種者) |
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感染力 | ‥‥‥ |
★★★ |
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感染経路 | ‥‥‥ |
外傷時に傷口から感染。 |
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潜伏期間 | ‥‥‥ |
4日〜2週間。 |
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主な生息地 | ‥‥‥ |
世界中の土壌。 |
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症状 | ‥‥‥ |
開口障害、全身痙攣。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
免疫グロブリン、破傷風トキソイドの注射。 |
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危険レベル | ‥‥‥ |
◆◆◆ |
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・ | 破傷風菌は土壌の中を初め地上にあまねく分布している。土壌だけでなく、道端に転がっている木片や砂利、古クギ、埃など、至るところに破傷風菌は存在する。外傷や火傷によってできた傷口から感染する事が多い。不衛生な手術が原因となる事もある。主な症状は破傷風菌が発生する神経性毒素の作用により、全身の筋肉が緊張、硬直してしまうというもの。その結果、最終的には呼吸が停止し窒息死する場合が多い。予防接種を受けていない場合の死亡率は50%以上に達すると言われている。身の回りにごく当たり前に存在する病原体としては究めて危険性が高いものの一つ。破傷風菌は嫌気性細菌で、外気に触れ、酸素に多く接する所では増殖しない。外気に触れにくく、しかも栄養に富む環境は破傷風菌の増殖にうってつけの場所。人体の内部がそういう場所である事は言うまでもない。傷口が奥深い部分まで到達してしまうような鋭利な器物による外傷が破傷風発病の最大の原因になる。古クギを踏んだり、尖った木片が刺さったりしてできた傷から感染する例が多い。その他では傷の内部に木屑や砂利が残っていたり、傷口を充分に消毒しないまま応急テープを貼ったり縫合されてしまった場合に破傷風になりやすい。一旦、傷口から入り込み人体の内部まで侵入すると破傷風菌は全身に徐々に増殖の場を広げて行く。この破傷風菌は増殖に伴って外毒素と呼ばれる有毒物資を放出し、この毒が神経系に作用する事によって破傷風の様々な症状が現れる。 | ||||
・ |
破傷風ま症状は、まず破傷風菌に感染して4日〜2週間後、平均1週間後に食物を噛むと顎が疲れる、肩や首がこる、傷ができた側の手足が痛むなどの症状が出てくる。ここから症状は急激に進行し、1〜2日のうちに口がほとんど1センチ程度しか開けられなくなる。このため言葉は出ず、食物も飲み込めない。呼吸困難、歩行困難などにも陥る。最も生命に危険が及ぶ状態はその後訪れる。全身の筋肉が硬直し、体に少し触っただけでビクッとなる様な激しい腱反射も併発するため、全身痙攣発作が始まる。この発作は数分〜数10分の間隔で何度も続いて起こり、その時期、患者の呼吸は完全に停止する。気管には多くの痰が溜まるが、それを吐き出す事もできない。こうして多くの人は窒息したり呼吸ができなくなり命を落とす。耐え難い苦しみが入れ替わり立ち代わり訪れる中、意識だけは最後まで明瞭。破傷風菌が一旦増殖すれば薬物治療はもはや及ばない。破傷風の発病を防ぐには体内に免疫を作って置く事。破傷風菌の毒素を無毒化した『破傷風トキソイド』の注射を受ければ、それから数年間は破傷風に対する抵抗力が保たれる。 |
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◆アメーバ赤痢 | 病原体 | ‥‥‥ |
赤痢アメーバ(寄生虫)。 |
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致死率 | ‥‥‥ | 数%程度。 | |||
感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ |
アメーバ嚢子を含む水や野菜から経口感染。または感染者とのアナルセックス。 |
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潜伏期間 | ‥‥‥ | 1〜3週間。 | |||
主な生息地 | ‥‥‥ | 熱帯地方。 | |||
症状 | ‥‥‥ | 下痢、腰痛。 | |||
治療法 | ‥‥‥ |
メトロニダゾールなどの内服。 |
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危険レベル | ‥‥‥ | ◆◆◆◆ | |||
・ |
アメーバ赤痢は人体に寄生する性質を持つアメーバ状の単細胞生物『赤痢アメーバ』の感染によって起こる原虫感染症。潰瘍ができ腸がえぐれ、出血を伴う激しい下痢や腹痛が起こる。微熱を訴える患者も少なくない。何といっても感染者の数が非常に多い事がアメーバ赤痢の大きな特徴。WHO(世界保険機関)の推計によれば熱帯・亜熱帯の国を中心に世界中の感染者の数は5億人に達するとみられている。まさに地球規模の感染症という事ができる。このうち、実際に様々な症状が現れている発病者の数は約4000万人、年間の死亡者は10万人にも及ぶ。日本でも戦前まではアメーバ赤痢の患者はきわめて多かった。国民の7%が感染していたという時期もある。戦後になり衛生環境や国民の栄養状態が改善するにしたがって感染者の数は激減。一時は年間の感染者の数は10人程度まで減っている。しかし、その傾向も長く続かず、最近の感染者の報告数は年間50〜100人の間を推移している。死亡者の報告もまれではない。 |
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・ | 赤痢アメーバは大きさ15〜30ミクロンの単細胞生物(原虫ともいう)。いわゆるアメーバ状をして動き回る『栄養型虫体』の時期と、硬い袋にアメーバが包まれ小さなイクラの様な球状になる『嚢子(のうし)』の時期がある。栄養型のアメーバは外界に消化液の様な組織融解酵素を出し、まさに人体を食い荒らしながら栄養分を細胞内に取り込んで行くが、外界に出た場合の抵抗力は低く、ヒトへの感染能力はほとんどない。感染能力が高いのは感染者の便に放出される嚢子の方。赤痢アメーバの感染は赤痢アメーバの嚢子を含んだ水や野菜、魚介類などを飲み込む事から始まる。口から人間の体内に入った嚢子は小腸のあたりに来ると外側の袋が破れ、中からアメーバが飛び出して来る。このアメーバは何回か分裂し、大腸に到達する頃には栄養型のアメーバになっている。赤痢アメーバは最初のターゲットとして大腸壁に狙いをつける。組織融解酵素を出して、大腸壁を消化して行く。早い場合には感染から1週間ほどで大腸に穴があく。この穴から赤痢アメーバは次々と侵入し、大腸壁を深く広くあさっていく。こうして大腸の内側はボロボロになり、いわゆる潰瘍ができる。アメーバ赤痢の第一の症状である下痢はこの時起こる。この下痢便はアメーバ赤痢に極めて特徴的なもので、半透明の粘液と潰瘍から出た真っ赤な血、海が入り交じったイチゴゼリー状の軟便である。この下痢は非常に激しく、出血多量や脱水、別の感染症を起こして死亡する患者がかなり多い。ただし、下痢が起こり始めた時期にメトロニダゾールなどの抗アメーバ剤を服用できれば完治も可能。一方、亜熱帯や温帯で流行するタイプの場合は慢性的に軟便や下痢が続くが、これは次第に回復する事が多い。しかし、その時すでに腸から体内に侵入した赤痢アメーバは新たな移動を始めている。腸から侵入したアメーバはまず肝臓内に一旦立ち寄る。ここでも大腸と同じように消化活動と増殖を繰り返し、数年後には肝膿瘍と呼ばれる一種の『膿』を作る。人の免疫細胞の死骸と侵入アメーバの死骸がぐじゅぐじゅになって膿になる。さらに血行に乗ったアメーバが心臓、脳、腎臓、肛門、亀頭などに移動し、これらの場所に膿痍を作る事もある。このようにアメーバが腸から体内に侵入した場合にはじわじわと症状が進行して行き、患者本人の気づいていない事がほとんどである。数年後に気づいた時はかなり厄介な状態になっており治療には少なくとも数カ月を要する事が多い。 | ||||
◆マラリア | 病原体 | ‥‥‥ |
マラリア原虫(寄生虫)。 |
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致死率 | ‥‥‥ | 数% | |||
感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | |||
感染経路 | ‥‥‥ |
ハマダラカが媒介。 |
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潜伏機関 | ‥‥‥ |
熱帯熱マラリアでは10〜15日、その他では2週間〜数カ月。 |
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主な生息地 | ‥‥‥ |
アフリカ、アジア。 |
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症状 | ‥‥‥ |
震え、悪寒、高熱を反復する。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
特効薬が効かなくなりつつある。 |
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危険レベル | ‥‥‥ |
◆◆◆◆ |
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・ |
WHOによれば、現在、年間推定3億〜5億人がマラリアに感染し、そのうち少なくとも1億人以上が発病し、150〜300万人が毎年死んでいる。この死者のうち約100万人は5歳以下の幼児。マラリアが蔓延する地域は90ケ国に及ぶ。世界人口53億人のうち42%がこれらの国々に住んでおり、日夜マラリアの恐怖の中で暮らしている。 |
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・ |
基本的には熱病の一種で高熱が主症状だが、発熱に先立ってまず悪寒が起こる。この悪寒とそれに伴う震えがマラリアの特徴的な症状である。悪寒が消えると40度前後の発熱が来る。それが4〜5時間続くと今度は熱が嘘のように引いて行き随伴する全身症状もなくなってしまう。熱発作と呼ばれるこうした発熱の形が2日から5日の周期で繰り返し襲って来る。熱発作の周期は病原体のタイプによって決まっている。そのうちに重症度を増し意識障害、循環不全などを起こして来ると悪性マラリアと呼ばれる状態に陥り、次は死が待ち受けている。 |
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・ | 治療はいくつかの『特効薬』がある。17世紀には南米で布教していた宣教師がキナの樹皮からマラリアに効く成分を発見して、当時マラリアが蔓延していたヨーロッパに持ち込んだ。キナの樹皮には即効性があり、この発見によりマラリアの治療は著しく進歩した。この成分は1920年代に製品化された。現在も有力な治療薬として使われているキニーネである。また、第二次世界大戦中の1943年には、米軍がクロロキンを使い始めた。マラリアがはびこる太平洋戦線における米軍の勝利にはこのクロロキンが大きく貢献した。副作用が少なく、キニーネより長く効くため、予防薬としても使われる。さらにメフキン、ファンシダールなど、効果的な新薬が登場した。これらの薬はあらかじめ定期的に服用している事で万一マラリアに感染しても発作せずにすむ。汚染地域に旅行する際やこうした地域に赴任して生活する際には必須の予防薬として広く普及している。 | ||||
・ |
マラリアを起こすのはウイルスや細菌ではなく原虫と呼ばれる単細胞生物の一種。マラリア原虫の研究は1880年11月にアルジェリアに駐在していたフランス陸軍軍医シャルル・ラヴァンが顕微鏡で半月状をした虫体を確認したのを契機に一気に進み始める。胞子虫類のプラスモディウム属の原虫のうち、ヒトに感染してマラリアを発病させるのは熱帯熱のマラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫の4種類のマラリア原虫である。それぞれ少しづつ症状の現れ方が違うが、反復する悪寒、発熱などは共通の特徴的症状だ。この中で特に重症化し致死率が高い悪性マラリアの状態に至るのは大半が熱帯熱マラリアによる場合。熱帯熱マラリアは速攻性であり、潜伏期も12日前後と4つのマラリアのうち最短。症状の現れ方も速く激しいが、薬が効いて熱が下がりさえすれば1〜2カ月で完治する。一方、その他の3つのマラリアでは致死率はさほど高くないが、治療が長引く事があり慢性化する事もある。四日熱マラリアでは10年余にわたって再発を繰り返すことがある。いずれも媒介するのは蚊、それもハマダラカの雌だけである。ヒトからヒトへの直接感染はない。つまり、マラリアはハマダラカがいなければ感染しない。熱帯、温帯地域を問わず、マラリアがある所には必ず媒介するハマダラカがいる。この事実が明らかになってからマラリア対策は飛躍的に進んだ。とにかく蚊を駆除すればマラリアから解放される。特にDDTが使えるようになった時、WHOを初め専門家たちが進んで撲滅計画をぶち上げたのも無理はない。 |
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・ |
DDTの散布を武器にハマダラカ撲滅作戦を開始してから10年も経たないうちにDDTではやられないハマダラカが出現し始める。人体に対する毒性も問題化して結局DDTは使えなくなってしまう。さらに追い打ちをかけるように、ほぼ同時期に熱帯熱マラリア原虫の特効薬の一つであるクロロキンが効かない病原体が出て来る。抗マラリア薬を長期間大量に使って来た結果だった。撲滅計画の挫折をあざ笑うかのようにマラリアは急激に増え始め、1976年をピークとする大流行を招来した。アジアを中心に急速に広まったクロロキンの効かないマラリアに対抗して、メフロキンという治療薬が開発された。ところが最近ではメフロキンも効かないマラリアが出現している。同様にファンシダールもアジアでは効かない事が多くなった。むしろ古くからあったキニーネやドキシサイクロンといった抗マラリア薬の方が効く場合もある。 |
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・ |
マラリアは古くから『瘧(ぎゃく、おこり)』の字が充てられ重要な疫病として歴史にしばし登場する。701年に作られた大宝律令のうちの一巻である『医疾令』にはすでに『瘧』に対する準備をせよとの記述が見られる。紫式部は源氏物語の若紫の巻の冒頭の一節を『わらは病みにわづらい給いて‥‥‥』と綴った。『わらはやみ』は『えやみ』と共に当時のマラリアの呼称である。光源氏もマラリアを患った。1181年閏二月四日に六波羅入道こと平清盛に非業の死をもたらした熱病もマラリアだったと推察されている。その異常な高熱は身体を比叡山の霊水で冷やしたところ忽ち熱湯になったほどだったという。江戸時代、マラリアは『おこり』と呼ばれ、しばしば流行し、芭蕉もマラリアで亡くなった。 |
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◆バンクロフト | 病原体 | ‥‥‥ |
バンクロフト糸状虫(寄生虫)。 |
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糸状虫症 | 致死率 | ‥‥‥ | 数%程度。 | ||
(フィラリア) | 感染力 | ‥‥‥ | ★★★★ | ||
沖縄方言では | 感染経路 | ‥‥‥ |
アカイエカ、ハマダラカ、ネッタイシマカなどが媒体。 |
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『クサフルイ』 | 潜伏機関 | ‥‥‥ | 数年〜数10年。 | ||
主な生息地 | ‥‥‥ |
アフリカ、中南米、東南アジア。 |
|||
症状 | ‥‥‥ |
発熱、陰のう水腫、象皮状変化など。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
ジエチルカルバマジン、イベルメクチンの投与。 |
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危険レベル | ‥‥‥ | ◆◆◆ | |||
・ |
フィラリア感染症は世界中で10種類以上が知られているが、その中でも赤道を中心とした全地球上に存在し、最大の患者数を誇っているのがバンクロフト糸状虫症。現在、全世界の患者数は1億8000万人とも2億5000万人とも言われている。バンクロフト糸状虫症の最大の特徴は、その患者が示す異様な外観。ある者はまるで詰め物でもしたかのように手や足が普通の何倍にも膨れ上がってしまう。またある者は長さ1メートル、重さ10キロにも達しようかという不気味な肉の塊を股の間にぶら下げている。これが陰のうや陰茎、陰唇の変わり果てた姿だと理解できるまでにはしばらく時間が必要。二つの乳房が頭より大きくなり腰より下にぶら下がったままの女性もいる。また、ほとんどの患者は両手両足の皮膚がガサガサで、まるで象の皮膚のように硬くなる。これらの症状はいわゆる『象皮病』と呼ばれる変化。象皮病の存在は歴史的にもかなり古くから知られていた。インド、ペルシアの時代から『アラビア象皮病』に関する記録がある。日本にも以前は北海道を除くすべての県に患者がいた。中でも鹿児島県、沖縄県に多かったが、戦後になってほぼ根絶されている。 |
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・ |
バンクロフト糸状虫はその名の通り糸のように細長い寄生虫で人体内では特にリンパ管やリンパ節を好んで寄生する。成虫メスの大きさは長さ8〜10センチにも達するが、オスはそれより短く、約3センチ程度。メスは成熟すると大きさ約0.3ミリの幼虫、ミクロフィラリアを無数に生む。バンクロフト糸状虫を人間に媒介するのは蚊。バンクロフト糸状虫の原因となる蚊は世界中で100種類以上知られているが主なものにアカイエカ、ハマダラカ、ネッタイシマカなどがある。同じく蚊を媒介する最大の感染症にマラリアがあるが、バンクロフト糸状虫の感染の様式は少々異なる。ヒトと蚊の間でフィラリア幼虫のやり取りを何度も繰り返しながら徐々にフィラリアの成虫がリンパ管内で増えて行くのである。成虫から生み出されたミクロフィラリアはやがて血管内に入り血液と共に人体の全身を巡るようになる。この時期のミクロフィラリアには面白い性質がある。昼間の内は肺血管の内部に隠れており、深夜になって初めて抹消血管に遊走して来る。蚊の多くは夜行性なので寝ているうちにヒトが蚊に血を吸われるとミクロフィラリアは蚊の体内に入り、そこで約1〜2ミリの感染型幼虫に成熟する。そして感染型幼虫は再び、その蚊がヒトの血を吸う時に口吻から人体内に侵入する。この感染型幼虫はやがてリンパ管内に入り、3ケ月〜1年の間に成長し成虫となる。この成虫は特に足の付け根、腋の下、精索などのリンパ管を好み、次々とミクロフィラリアを生みながら人体に有害な各種の代謝産物を撒き散らして行く。このため、リンパ管の壁は徐々に厚くなり内径が細く詰まってくる。ちなみに精索とは男性性器の精子の通り道。しかし、二十歳になるまで多くの患者は無症状のまま。最初の症状である発熱が出現するまでには感染してから短くて数カ月、長ければ数10年が経っている。この発熱はフィラリア成虫が寄生したリンパ管の場所の腫れを伴い、数週間〜数カ月ごとに反復して起こるのが特徴。草刈りなどの野外作業をした時にできる小さな傷が原因になって感染し、発熱、戦慄が生じる事が多いため、クサフルイと呼んで忌み嫌った。これが数年続くうちにリンパ管は最後には閉塞してしまう。その結果、その近くの皮膚は慢性的な炎症が続き、表面はぼろぼろになった『象皮』の状態になる。さらに付近のリンパ液が流れなくなるため、寄生虫が感染したリンパ管の周囲が次第に膨れ上がってくる。こうして陰のう、陰茎、陰唇、乳房、手足が異様に巨大化していく。また、たまったリンパ液が尿から滲み出すため尿は牛乳のように白濁する。 |
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◆インフルエンザ | 病原体 | ‥‥‥ |
インフルエンザウイルス。 |
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死亡率 | ‥‥‥ |
1〜3%(直接死亡のみ) |
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感染力 | ‥‥‥ |
★★★★★ |
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感染経路 | ‥‥‥ |
飛沫感染。 |
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潜伏期間 | ‥‥‥ | 1〜3日。 | |||
主な生息地 | ‥‥‥ |
世界各地。 |
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症状 | ‥‥‥ |
高熱、強い関節痛、筋肉痛などの全身症状。 |
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治療法 | ‥‥‥ | 特になし。 | |||
・ |
1918年春から1919年春までに全世界でインフルエンザの患者は6億人に達し、死亡者は2000〜2500万人に達する。 |
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◆エイズ | 病原体 | ‥‥‥ |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)。 |
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(後天性免疫 | 死亡率 | ‥‥‥ | 100%。 | ||
不全症候群) | 感染力 | ‥‥‥ | ★★★ | ||
潜伏経路 | ‥‥‥ |
性交、輸血、血液剤。 |
|||
潜伏期間 | ‥‥‥ |
5〜15年。 |
|||
主な生息地 | ‥‥‥ |
世界各地。 |
|||
症状 | ‥‥‥ |
多種多様な感染症に伴う多臓器不全、失明、悪性リンパ腫などのガンなど。 |
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治療法 | ‥‥‥ |
薬物療法、遺伝子治療、骨髄移植。 |
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・ |
発見は1981年。存在は50年代まで逆上れる事が明らかになった。 |
◆寄生虫 | 動物 | 食品 | 寄生虫 | 治療薬、治療法 |
熊 | 生刺し、ルイベ | 旋毛虫 |
メベンダゾール |
|
馬、豚 | 生刺し | 旋毛虫 |
メベンダゾール |
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豚 | 生肉、生血 | 有鉤嚢虫、有鉤条虫 | アミノサイジン | |
牛 | たたき、牛刺し | 無鉤条虫 |
プラジカンテル |
|
肝刺し | 肝蛭 | プラジカンテル | ||
鶏 | 肝刺し | イヌ・ネコ回虫 |
サイアベンダゾール |
|
ささみ造り | マンソン狐虫 |
プラジカンテル、外科的摘出 |
||
カエル | 刺身 | マンソン狐虫 |
プラジカンテル、外科的摘出 |
|
蛇 | 刺身 | マンソン狐虫 |
プラジカンテル、外科的摘出 |
|
スッポン | 生血 | マンソン狐虫 |
プラジカンテル、外科的摘出 |
|
猪 | 生肉 | 肺吸虫 |
プラジカンテル |
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サワガニ | 残酷食い | 肺吸虫 |
プラジカンテル |
|
モクズガニ | 老酒漬け | 肺吸虫 |
プラジカンテル |
|
ドジョウ | 踊り食い | 剛棘顎口虫 |
メベンダゾール |
|
棘口吸虫 | プラジカンテル | |||
アユ | ぶっきり。三杯酢 | 横川吸虫 |
プラジカンテル |
|
鯉、鮒 | 刺身、あらい | 肺吸虫 |
プラジカンテル |
|
鮭、鱒 | 刺身、ルイベ | 広節裂頭条虫 |
アミノサイジン |
|
ナマズ、雷魚 | 刺身 | 有棘顎口虫 |
メベンダゾール |
|
鰯、鯖 | 刺身、三杯酢 | 大複殖門条虫 |
アミノサイジン |