沖縄の酔雲庵

尚巴志伝

井野酔雲







李芸とアガシ




 開京(ケギョン)から漢城府(ハンソンブ)に帰るとサハチたちを待っている男がいた。イトから話を聞いていた李芸(イイエ)だった。ヤマトゥ言葉が話せるというので、サハチも会いたいと思い、丈太郎(じょうたろう)に頼んでいた。

 サハチたちが漢城府に帰った次の日に、李芸は津島屋にやって来た。ファイチは手に入れたヘグム(奚琴)の弾き方を習おうと、ンマムイと一緒にサダン(旅芸人)の所に出掛け、サハチたちも行こうとしていた所だった。

 李芸は両班(ヤンバン)の格好をして、見るからに頭がよさそうだった。意外に思ったのは、武芸の(たしな)みがあるという事だ。にこやかな顔をして、武器は持っていないが、かなりできそうだと思った。

 流暢(りゅうちょう)なヤマトゥ言葉で李芸はサハチたちに挨拶をした。サハチは琉球中山王の世子(せいし)だと名乗った。丈太郎が李芸を信じて、すでにサハチの正体を告げていたのだった。

「驚きましたよ。琉球中山王の世子が、使者たちと別行動を取って、先に漢城府に来ていたなんて」

「内緒にしておいて下さい。ばれると使者たちの立場が悪くなるかもしれません」

「わかっています。お忍びという事で」と李芸は笑った。

 サハチたちは津島屋の離れで、お茶を飲みながら李芸と話し合った。そのお茶は開京で手に入れたものだった。漢城府ではお茶を手に入れる事もできなかった。

 李芸は琉球に連れ去られた朝鮮(チョソン)人の事をサハチに聞いた。

「今はあまりいません」とサハチは答えた。

「二十年以上前はかなりいました。先々代の中山王(察度)が琉球に連れて来られた高麗(こうらい)人を高麗に送り返す事で、琉球と高麗の交易が始まりました。中山王に高麗人を高麗に返すようにと進言したのは、ここにいるウニタキです。ウニタキの母親は琉球にさらわれた高麗人なのです」

「えっ、それは本当なのですか」と李芸は驚いて、ウニタキを見た。

 ウニタキはうなづいた。

「当時、俺は勝連(かちりん)という所にいて、親父は勝連の領主でした。交易に来た倭寇(わこう)は親父に取り入るために、高麗からさらって来た美しい娘を贈ったのです。それが俺の母親です」

「わたしの母親はわたしが八歳の時に倭寇に連れ去られました。父は蔚州(ウルジュ)(蔚山)の役所に勤めていましたが殺されました。八歳のわたしは倭寇を憎み、両親の(かたき)を討たなくてはならないと思ったのです」

「それで武芸を始めたのですね」とサハチは聞いた。

 李芸は笑って、「皆さん方にはかないませんよ」と言った。

「ナナの父親は朝鮮の兵に殺されました。ナナは敵を討つために武芸を習い、初代の朝鮮の王様を敵と狙っていたようです」

「何ですって!」と李芸は驚いて、男の格好をしたナナを見た。

「敵は死んじゃったわ」とナナは言って、両手を広げて見せた。

「敵は討ったのですか」とサハチは李芸に聞いた。

 李芸は首を振った。

「倭寇と戦うには強くなって、武官にならなくてはならないと思ったのです。でも、倭寇といっても数が多すぎます。あの時、蔚州を襲って、父を殺し、母をさらって行ったのが誰なのかまったくわかりません。最近は大物の倭寇たちは朝鮮に投降して、朝鮮のために働いています。もう、敵を討つのは諦めました。でも、さらわれた母親は何としてでも救い出したい。それで、母親を探すために日本に行き、連れ去られた者たちを連れ帰っているのです。もしかしたら、母が琉球にいるかもしれません」

「八歳の時と言えば、三十年近くも前じゃないのですか」

「そうです。生きていれば、もうすぐ六十歳になります」

 六十歳と言えば、今回、通事(つうじ)として連れて来たチョルより少し年上という事になる。サミガー大主(うふぬし)の作業場で働いていた高麗の女たちもいたが、六十過ぎまで生きている者はいないような気がした。

「今回、琉球の使者たちが連れて来たのは先代の中山王の側室だった女たちです。先代の中山王の母親も高麗人で、高麗の娘を何人も側室に迎えたようです。他にも連れ去られて来た者がいたら連れて帰ろうと思ったのですが、見つかりませんでした」

「本当ですか」

「琉球まで連れて来るよりも、九州辺りで高く売れるのでしょう」

「確かに」と李芸は苦笑した。

「朝鮮に来る日本人たちは大蔵経(だいぞうきょう)を手に入れるために、倭寇に連れ去られた者たちをかき集めているようですね」

「二、三十年前に琉球に連れて来られ、遊女屋に買われた娘たちは今、どうしているのかわかりませんが、まだ琉球にいるはずです。遊女屋以外にも商人たちに買われた者や鳥島(硫黄鳥島)に人足として送られた者など、探せば見つかるかもしれません。来年も使者を送るつもりなので、なるべく探し出して連れて来ますよ」

「ありがとうございます。お願いします」

「李芸殿、お聞きしたいのですが、琉球の使者たちが都に来る許可は下りたのでしょうか」

「下りています。今頃はこちらに向かっている事でしょう」

「そうでしたか。それにしても許可が下りるまで随分と時間が掛かったように思いますが、何か問題でもあったのでしょうか」

「問題があったのは琉球側ではなくて、宮廷の方です。前回に琉球の使者たちが来た時の記録がなかなか見つからなかったようです。都の引っ越しが二度もあったので、どこかに紛れ込んでしまったのでしょう。おまけに、当時の担当者もすでにいなくなっていて、宮廷は大わらわだったようです。記録を管理していた者は左遷されました」

「そうでしたか。そう言えば、前回に来た琉球の使者はここではなく、開京に行ったのでしたね」

「そうです。開京から苦労して、こちらに移り、四年後に開京に戻り、そして、二年後にまたここに戻って来たのです。三日も掛けての大移動ですよ。記録がどこかに行ってしまうのも当然な事です」

「兄弟で王の座を争ったと聞いていますが、どうして、そのような事になったのですか」

「初代の王様(李成桂(イソンゲ))の長男(李芳雨(イバンウ))が跡を継ぐ前に亡くなってしまい、初代の王様は二番目の奥方様が産んだ末っ子(李芳碩(イバンソ))を跡継ぎに決めてしまいました。それが争いの原因になったのです。最初の奥方様の息子たちが猛反対して戦となり、最初の奥方様の次男(李芳果(イバングァ))が二代目の王様になりました。それで、無事に治まるかと思われましたが、今度は四男(李芳幹(イバンガン))が反乱を起こします。二代目の王様が王族の私兵を禁止したのに反対した四男が開京に攻め込んだのです。その反乱を鎮圧したのが五男の今の王様(李芳遠(イバンウォン))です。二代目の王様の正妻には子供がなかったので、今の王様が跡継ぎとなり、やがて、二代目は王位を今の王様に譲って上王(サンワン)となります。二代目の王様はもともと王位に就く気はなかったようです。今の王様に勧められて王位に就きましたが、実権を握っていたのは今の王様だったのです」

「今の王様はどうして、二代目の王様にならなかったのですか」

「今の王様は五男です。上には三人の兄がいます。いくら実力があったとしても、三人の兄を差し置いて王になる事はできなかったのです。大義名分がありません」

 サハチは自分の兄弟の事を思った。もし、サハチが父より先に亡くなったら、兄弟で王位を巡って争いを始めるのだろうか。サハチは五人兄弟で、弟は四人いる。仲のいい弟たちがそんな事をするはずはないと思うが、あり得ないとは言い切れなかった。

 サハチは話題を変えて、

「ところで、朝鮮の王様が何を欲しがっているのかわかりますか」と李芸に聞いた。

「わたし共の方も朝鮮の使者たちの記録が残っていなくて、詳しい事がわからないのです。できれば、喜ばれる物を持って来たいと思っております」

「まず、日本刀ですね。ただし、大量の日本刀を持って来られると困ります。名刀を数本です。王様が活躍した武官に下賜(かし)するのに使います。それと火薬の原料となる硫黄も必要です。これも大量に持ち込まれると困ります。朝鮮は常に明国を刺激しないように努めています。大量の武器を仕入れている事が明国に知られると誤解されかねません。(げん)の時代、高麗は元の大軍に攻め込まれて降参し、元の属国になってしまいました。二度とあんな惨めな思いはしたくはありません」

 李芸は軽く笑ってから話を続けた。

「銅も喜ばれるでしょう。御存じのように、朝鮮では銅銭が流通していません。明国に行った事のある王様は銅銭の便利さを知っています。銅銭を造って国内に流通させたいと考えています。それに、胡椒(こしょう)も喜ばれます。仏教が禁止されて、両班たちは堂々と肉を食べ始めました。今、両班たちは目の色を変えて胡椒を求めています。勿論、宮廷でも必要としています。布を赤く染める蘇木(そぼく)も喜ばれるでしょう。位の高い役人が来ている赤い官服は宮廷内で作っています。蘇木は明国から仕入れていますが、琉球が持って来てくれれば王様も大喜びするでしょう」

「蘇木と胡椒、数本の名刀と適量の硫黄、それに銅ですね。明国の陶器はどうですか」

「陶器も喜ばれますよ」

「陶器は大量に持って来ても大丈夫ですね」

「勿論です。ただ、富山浦(プサンポ)からここまで運ぶのが大変でしょう」

 サハチは細い山道を思い出した。確かに運ぶのは大変だった。

「水路は利用できないのですか」とサハチは聞いた。

「できない事はありませんが、前例のない事を決めるのは容易な事ではありませんよ」

 李芸はヂャンサンフォンにも明国にさらわれた朝鮮人はいないかと聞いていたが、ヂャンサンフォンは知らないようだった。ウニタキからウニタキの母親の事を聞き、ナナから戦死した父親の事を聞いて、また来ると言って李芸は帰って行った。

 琉球の使者たちが来るまでの間、サハチたちは毎日、サダンたちの仮小屋に行っていた。ファイチはヘグムの弾き方を習い、ヂャンサンフォンはテグム(竹の横笛)の吹き方を習い、サハチはテピョンソ(チャルメラ)の吹き方を習い、ウニタキは三弦(サンシェン)、ンマムイは横笛の稽古に励み、その合間に、サダンの者たちに武芸を教えていた。

 ウニタキの三弦は開京の妓女(キニョ)からもらったものだった。五十年以上も前に元の国から来た使者が妓女に贈った物だという。贈られた妓女はその三弦を弾き、代々受け継いで弾いていたらしいが、五、六年前に、三弦を弾いていた妓女が亡くなってしまってからは誰も弾く者はいない。しまっておくより、ウニタキが弾いてくれた方が三弦も喜ぶだろうと妓女は惜しげもなく、ウニタキに譲ったのだった。ウニタキが言うにはかなりの名器だという。大きさが一回り大きいので、何となく渋い音が出るようで、ウニタキは気に入っていた。三弦が手に入ったので、ウニタキはテピョンソをサハチに返した。結局、サハチが吹き方を身に付けなければならなくなっていた。

 八月が過ぎて九月となり、朝晩が肌寒く感じるようになってきた。琉球の使者たちが漢城府に着いたのは九月六日の事だった。その日、サハチは五郎左衛門が来るような予感がして、いつもよりも早く、サダンたちの仮小屋から引き上げてきた。

 津島屋にはお客さんが来ていた。屋敷の一画に小さな店があって、タカラガイなどの貝殻を売っている。店番をしているのはハナだった。父と娘らしい二人が店の中にいて、貝殻を見ていた。

 朝鮮の娘たちはノリゲと呼ばれる飾りを身に付けているが、そのノリゲに綺麗なタカラガイを飾るのが流行っていた。

 ハナの話では、それを流行らせたのは王様の娘で、今では宮廷で働く女官たちから両班の娘たちまで、タカラガイのノリゲを身に付けていると言って、自分のノリゲを見せてくれた。紐を束ねたような飾りで、その付け根のあたりに黄色いタカラガイが付いていた。漢城府でタカラガイを手に入れるには津島屋しかなく、用があって宮廷の外に出た女官や両班の娘たちが買い求めに来るという。開京の妓女たちもタカラガイのノリゲを身に付けていた。

 両班の娘が父親を連れて、タカラガイを買いに来たのだろうと思い、サハチは離れの方に行こうとしたらナナに声を掛けられた。

「ねえ、あの人、どう思う?」とナナは店の中にいる両班を見ながらサハチに聞いた。

「どう思うとは?」

「何者かって事よ」

「両班だろう。身なりからして、かなり地位の高い男じゃないのか」

 ナナはサハチにうなづき、「王様のような気がするのよ」と小声で言った。

「えっ?」とサハチは驚き、ナナを見てからもう一度、両班を見た。

 四十の半ばといった年頃で、貫禄があり、よく手入れされた髭にも風格があった。

「王様を見た事があるのか」とサハチはナナに聞いた。

「一度だけ、馬に乗っている姿を見た事あるわ。格好は全然違うけど、何となく似ているのよ」

「お忍びだとしても護衛の者がいるだろう」とサハチは言って、津島屋の門の外にいた二人の両班を思い出した。大通りを歩いている両班は珍しくもないが、その二人は門の脇に立って、立ち話をしていた。王様の護衛かもしれなかった。

「それに、あのアガシ(お嬢さん)なんだけど、前にも何度か来ているのよ。どこのアガシだろうと思って、あとを追って行った事があるの」

「お前は危ない事ばかりしているな。そのうち痛い目に遭うぞ。それで、あのアガシの正体はわかったのか」

 ナナはうなづいて、「慶安公主(キョンアンコンジュ)様だったのよ」と言った。

 サハチが驚くと思ったのにポカンとした顔をしているので、「王様の娘さんだったのよ」と言い直した。

「タカラガイのノリゲを流行らせたのがあのアガシだったのよ」

「王様の娘なら宮殿に住んでいるんだろう。お前、宮殿内に忍び込んだのか」

「違うわよ。あのアガシ、お嫁に行って宮廷から出ているのよ」

「お嫁に行っている娘には見えないが」とサハチは言った。

 どう見ても、十五、六歳にしか見えなかった。

「王族は婚礼が早いのよ」

「あのアガシが王様の娘なら、一緒にいるのは王様かもしれんな」

「そうでしょ。あのアガシが住んでいるお屋敷の周辺で聞いたんだけど、王様が度々、お忍びでやって来るって言っていたわ。あのアガシは王様の三女で、美人のうえ聡明で、王様にもっとも可愛がられているらしいのよ」

「あのアガシのお陰で、タカラガイは益々売れそうだな」とサハチは言った。

「そうよ。シンゴさんにタカラガイをもっと持って来るように伝えてね」

 そう言って、ナナは腰にぶら下げたノリゲを見せた。綺麗なタカラガイが光っていた。男の格好をしているくせに、女心はあるらしい。

「サハチが似合うよ」と言うと、ナナは嬉しそうに笑った。

「そんな所で何をしているんだ」と誰かが言った。

 振り返ると官服を来た五郎左衛門がいた。

「五郎左衛門殿。使者たちはやっと着いたのですね」とサハチは五郎左衛門に聞いた。

 五郎左衛門はうなづいた。

東大門(トンデムン)の外にある円明寺(ウォンミョンサ)というお寺に入った。みんな、疲れ果てている。わしはこれから宮殿に行くんだが、通り道なんで、ちょっと寄ってみたんだ」

 ナナが店の方を五郎左衛門に示した。

「チョナー」と五郎左衛門は言った。

「やっぱり、王様だったのね」とナナが言った。

 五郎左衛門は慌てて、王様の所へと向かった。ひざまずこうとして、王様に止められたようだった。五郎左衛門は店の脇に立ち止まったまま、王様と娘を見守った。

 気に入ったタカラガイを手に入れて、大喜びした娘は父と一緒に帰って行った。五郎左衛門は頭を下げただけで、王様と話をする事はなかった。サハチたちも軽く頭を下げただけで、王様と慶安公主を見送った。何も知らないハナが五郎左衛門を見つけて、「あら、お祖父(じい)様、いらっしゃい」と笑った。

「今のアガシはよく来るのか」と五郎左衛門がハナに聞いた。

「お得意様よ。お兄さんのお嫁さんのお誕生日のお祝いに贈るタカラガイを探していたのよ。お祖父様はまたお客さんを都に連れて来たのね。もうお仕事は終わったの」

「いや、これから宮殿に行く所じゃ」

「そうなの。早く、帰って来てね」

 五郎左衛門はハナにうなづくと、サハチたちの所に来て、「ハナには話すなよ」と言った。

「あのアガシはまた来るだろう。正体を知ってしまったら、ハナの奴、まともな応対もできなくなる。それに、あのアガシも来なくなってしまうだろう。内緒にしておいてくれ」

 そう言って、五郎左衛門は出て行った。

「驚いたな」とサハチは五郎左衛門を見送ってからナナに言った。

「王様に会えるとは思ってもいなかった」

「会ったというよりは見ただけだけど」

「そうかもしれんが、こんなに近くで王様に会うなんて、なかなかできないだろう」

「そうね。敵を討てばよかったかしら」

「馬鹿な事を言うな。ここで騒ぎを起こしたら、津島屋はつぶされるぞ」

「冗談よ。なぜか、王様を見ても、敵だとは思わなかったわ。王様もお父さんなのねって思っただけよ」

「確かに、娘を想うお父さんだったな」

「いいわね。あたしはお父さんていうものをよく知らないのよ。幼い頃、時々、訪ねて来てくれたんだけど、だんだんとその記憶も薄れてきてしまって、どんな顔だったのかも思い出せないの」

「開京でお屋形様に会っただろう。お前の親父はお屋形様をちょっと男前にした感じだよ」

「あたしのお父さんの事、知っているの」

「二十二年前、対馬に行った時、お前の親父さんに会った。お屋形様と並んで座っていたけど、お前の親父さんの方が貫禄があったよ。早田家の跡継ぎという威厳が備わっていた」

「そうだったの。お父さんがお屋形様より威厳があったんだ‥‥‥」

「先代のお屋形様もお前の親父さんを頼りにしていたらしい。今のお屋形様は当時、奥さんの実家の中尾家を継いで中尾姓を名乗っていたんだよ。お前の親父さんが亡くなってから、早田姓に戻ったようだ」

「そうだったの‥‥‥戦死しなければ、お父さんがお屋形様になっていたのね」

「そうだな。お前はお屋形様の娘として育ち、武芸なんかしなかっただろう」

「あら、そんな事はないわ。サキ叔母さんだって武芸を身に付けているもの。ところで、みんなはどうしたの」

「まだ、サダンの所にいるよ」

「どうして、一人で帰って来たの」

「何となく、五郎左衛門殿が帰って来るような予感がしたんだ」

 ナナは笑って、「まるで、ササみたい」と言った。

 俺も神人(かみんちゅ)に近づいて来たのかなとサハチは思った。





朝鮮、漢城府




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