32
庭で子供たちが遊び回っている。 砂場では二歳位の小さな子供たちが数人、遊んでいる。 ベンチに腰掛けて、子供を見ているラーラと久美子。 「あんた、いくつなの?」と久美子はラーラに聞いた。 「十八よ」 「へえ、十八でもう子供がいるとはね。驚いたわ」 「仕方がないじゃない。天からの授かり物だもん」 「それで、お父さんは?」 「わからない」 「わからないって?」 「誰だかわからないのよ。別に誰でもいいのよ。まだ、男と一緒に暮らしたいとは思わないし‥‥‥」 「いい加減ね‥‥‥」 「あたし、困ってんのよね。あの子がいなければ、あたし、もう、さっさと人間の国に行っちゃうんだけど‥‥‥」 「でも、子供の事は大丈夫なんでしょ。ここで面倒を見てくれるし」 「そりゃ大丈夫だけど、もう二度と会えなくなっちゃうじゃない」 「そうか‥‥‥難しいわね」 「毎日さ、今日こそは子供に別れを告げて、この国から出ようと思って来るんだけど、あの子に会うと出られなくなっちゃうのよ。かと言って、さよならも言わないで黙って出て行けないし‥‥‥」 「いっそ、子供も一緒に連れてったら?」 「そんな事できないよ。あの子の人生はあの子のものだよ。あたしが勝手にそんな事できない」 「そうね‥‥‥」 二歳の子供がよちよちとラーラの所に来た。 「お母ちゃん、ちょっと来て」と子供はラーラの手を引っ張って砂場の方に行く。 「見て」と子供はラーラを見上げて言った。 「なあに、これ?」とラーラはしゃがみこんで、子供が作ったものを見ている。そして、二人は遊ぶ。 久美子はラーラと子供を見ている。
|
33
夕焼け。 たんぼの中の道を久美子とラーラが歩いている。 「あ〜あ、いやんなっちゃうな」 「可愛い子供じゃない」 「可愛いから余計よ。あ〜あ」 道端の木陰で男と女が抱き合っている。 久美子は見ない振りをする。 ラーラは楽しそうに見る。 「何だ、三公じゃない」とラーラは言った。 三公と呼ばれた男は女を抱きながら顔を上げた。 「よう、ラーラか。また、子供に会って来たのか?」 「うん‥‥‥どこの娘?」 「いい玉だろ。隣村の女だよ。見ろよ、このでっけえおっぱい。おめえの倍はあるぜ」 「そんなのでっかけりゃいいってもんじゃないやい」 「誰だい?」と三公は久美子の方を見る。 「誰でもいいだろ」 「紹介しろよ」 「やだよ。この人は特別なんだ。お前の腐れチンコ入れられたらたまんないよ」 「何を言ってやがる。おめえのマンコこそ腐ってるんじゃねえのか。子供ができてから、男が怖くなったってえじゃねえか。最近はレズってばかりいるんだろう」 「うるさい、馬鹿!」 ラーラ、プイと三公に背中を向けて歩きだす。 久美子はラーラの後を追った。 三公はまた女に熱中し始める。
|
34
ラーラの家。 ラーラが裸でポーズを取っている。 久美子、ラーラのヌードを描いている。 「どう、あたし、子供、産んだ体に見える?」 「全然、見えないわ」 「そう、それじゃあ大丈夫ね。あたし、この体で食べて行けるわね?」 「食べて行けるけど、他にないの? 何も体を売る事もないでしょ」 「だって、人間の国には子供が生まれないようにするお薬があるんでしょ」 「あるわ。でも、体によくないわ」 「子供さえできなけりゃ、もう、男なんて怖くないわ」 「できたわ、ほら」と久美子はラーラに絵を見せる。 「これ、ほんとにあたし?‥‥‥綺麗‥‥‥」 「そうよ。とても綺麗よ。勿体ないわよ。その体をくだらない男に売るなんて。どうせ売るんなら凄く高く売りなさい。それも、ただの男じゃなくて、その男の子供を産んでみたいと思うような男にね」 「うん、そうするわ。ありがとう」とラーラは久美子に抱き着いた。 ラーラ、久美子の目を見つめる。 「あたし、お姉さん、大好き」 ラーラ、久美子にキスする。 ラーラ、久美子の服を脱がそうとする。 「ちょっと待ってよ。あたし、女の子と寝るの、初めてなのよ‥‥‥恥ずかしいから、電気、消して」 「いいわ」とラーラは電気を消した。 服を脱ぐ音。 二人がもつれ合う音。
|
目次に戻る 次の章に進む |